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「それに、あの脅迫状もいただけなかったね。文面から自分のことを探して欲しくないけれど、鴨志田たちの爆破は止めて欲しいっていう気持ちがびんびんに伝わってきた。すぐに狂言誘拐だって分かったよ」
「でも、どうやってここが……？」
はぐみの問いに、二宮は「あれだよ」と、梅沢の膝の上にある黒い箱を指さす。
「爆弾？」
はぐみの眉間にしわが寄る。
「そう、はぐみさんが偽物とすり替えて、あの爆弾を持ち出そうとしていた事に気付いていた。だから、前もってちょっとした仕掛けをしていたんだ」
はぐみは素早く梅沢に近づくと、黒い箱の上蓋を外す。
梅沢が悲鳴を漏らすが、このくらいでは起爆しないように作ってある。
そもそも、タイマーをセットする際は、蓋を外さないといけない設定になっていた。
起爆用の回路と爆薬が露わになる。
はぐみは目を凝らして、回路の奥を覗き込む。
基板の隙間から、赤く細長いものが見えた。
「あれは……」
「嵐丸の首輪ですよ。奈美ちゃんがなくなったって騒いでいたでしょ。僕がその箱の中に隠して置いたんです」
「何でそんなことを？」
「その首輪にはペットが迷子になったとき居場所が分かるように、GPSが内蔵されているんだよ。それでここが分かったんだ。ただ4時間前まで全く反応がなかったから焦ったけどね」
はぐみは唇を噛む。
4時間前といえば、ちょうど蓋を開けて爆弾をセットした時だ。
それまで金属の蓋で電波が遮られていたのだろう。
「二宮先生、もう警察は呼んでいるんだろ?!爆弾処理班はいつ来てくれるんだ！」
梅沢が声を上げる。
しかし、二宮は答えることなく、はぐみたちに近づいてくる。
「爆破まではあと一時間か。充分だね」
「二宮先生、それ以上近づかないでください。もし近づいたら、この爆弾を落として爆発させます。爆弾処理班が来ても同じ事です。何と言われようと、私はこの男を殺します。説得しても無駄です」
爆弾に手を掛けながらはぐみが言うと、
二宮はぱちぱちと瞬きをする。
「説得？そんな事しないですよ」
予想外の答えに、はぐみの口から「え？」と声が漏れる。
「あれ？もしかしてはぐみさん、俺が『そんな事しても君の家族は戻らない。やめてください！』みたいな事を言うために、ここに来たと思ってます？」
「ちがうん……ですか？」
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
