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時限装置を作る代わりに鴨志田から爆薬を手に入れ、梅沢を殺害するつもりだった。
ずっと忘れていたその事を、はぐみは東陽町のビル爆破を防いだ夜に思い出した。
あの夜、公園で拉致された際、バンの中ではぐみは倉田に言われた。「家族を殺した奴に復讐するんじゃなかったのかよ」と。
その瞬間、頭の中に洪水が押し寄せるように、夫と娘の記憶、そしてなぜ自分が時限装置を作っていたかを思い出した。
バンから救い出され、大野クリニックに戻った時には、どうやって梅沢殺害計画を再開するか考えていた。
そんなとき、大野が偽物の爆弾を作って欲しいと言い出した。
記憶が戻っている事を伏せてその依頼を受けたはぐみは、偽の爆弾を2個作り、1個を大野に渡し、そしてもう1個を本物とすり替えた。
爆薬も、大野がバーの棚に置いた6つの爆薬の一つを、偽爆弾の材料を調達する歳にこっそりと買っておいた煉瓦と入れ替えて、手に入れた。
梅沢を殺すためには、一つあれば十分だった。
最後に、攫われたふりをきて大野クリニックをあとにしたはぐみは、本物の爆弾を持ったまま梅沢の自宅の前で張り込んだ。
そして、深夜に梅沢が車で帰宅するのを見つけると、近づいていき車の窓から爆弾を見せて言った。
「私の言う通りにしないと、この爆弾を爆発させる。そうなれば、家にいる家族も全員が吹き飛ばされる」と。
そうして梅沢を脅迫したはぐみは、車の後部座席に乗り込み、この別荘に行くように指示した。
別荘のことは秘書から聞いていた。
事故があった日、梅沢と秘書がここで逢引きをしていたと。
別荘に着いたはぐみは梅沢を椅子に座らせ、その膝の上に爆弾を置いてタイマーをセットしたのだった。
「君がうちに忍び込んだ時、私は医者を呼んで助けたんだぞ！」
はぐみの凍りつくような視線に気圧されていた梅沢が、声を絞り出す。
「それで恩を着せようっていうわけ？庭で倒れているのが、自分が殺した親子の家族だと気づいたから、救急車じゃなくて大野先生たちを呼んだんでしょ。普通の病院に連れて行かれたら警察を呼ばれて、自分がやった事が明るみに出るかもしれないから」
「た、たしかに、君が事故で亡くなった2人の家族だということは分かった。あの時、ちょうど秘書と事件について話し合いをしていたから」
梅沢は震える声で答える。
「話し合い？脅していたんでしょ？」
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
