__ ページ21
・
「べつに盗みに協力したわけじゃないさ。そもそも、あの女は俺たちが爆弾を何に使うか知らなかったしな。あいつはな、俺たちと取引したんだよ。時限装置を作る代わりに、爆薬を渡すっていう取引をな」
「爆薬を渡す？」
意味が分からず、櫻井は思わず聞き返す。
「ああ、そうだよ。そもそも、鴨志田があの女を見つけたのも、爆薬を探していたからだ。あの女、ネットの闇サイトで、幾ら掛かってもいいから爆薬を買いたいっていう書き込みをしていたんだよ。それを非合法品の調達で食ってる男が見つけて、連絡を取ったんだ。そうしたらあの女、爆薬の他に専門的な電子部品も手に入れて欲しいって言い出した。その部品が明らかに時限装置を作るために必要なものだったんで、その男は女の身元を調べたってわけだ。そうしたら、一流電機企業の技術者ときた。それで鴨志田に連絡が入った。鴨志田は今回の計画のために、時限装置を作れる技術者を探すように男に依頼していたからな」
淡々と話す内容に、櫻井は無言で耳を傾け続ける。
事件の真相に迫っている、その実感に心拍が加速していく。
「あの女に会った鴨志田は『高性能爆薬を調達する代わりに、絶対に解除出来ない時限装置を作ってくれ』と取引を持ち掛けた。あの女は二つ返事で了解したよ。何のためにそんなものを作らせるか、一言も訊かないでな。あいつ、完全にいかれてやがった」
倉田は皮肉っぽい笑みを浮かべる。
「でたらめ言うなよ。はぐみさんはお前らから逃げ出したから、殴られて川に落とされたんだろ。鴨志田とはぐみさんが協力していたら、そんな事になるわけがない」
櫻井が顔をしかめると、
倉田は座り込んだまま肩をすくめた。
「あの女、時限装置を4つ作ったところで、急に『こんな事やめたい』とか言い出したんだよ。当然、鴨志田が断ると『警察に出頭する』って部屋から飛び出しやがった。だから俺たちが追ったんだよ」
「……その話が本当だとして、何ではぐみさんは急に『やめる』って言い出したんだ？」
櫻井の問いに、倉田は再び肩をすくめる。
「そんなこと俺が知るかよ。まったく女っていうのは分からないよな。あんなに目の色変えて、復讐しようとしていたのによ」
「復讐?!復讐ってなんのことだ？」
「殺された旦那と娘の復讐だよ。なんだ、お前らその事も知らなかったのか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1025人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
