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『ああ、やっと出た。翔ちゃん、どこにいるの？大丈夫だった？』
「河川敷にいます。こっちは決着つきました。そちらは……大丈夫ですよね」
あの大野がたかだか３人に苦戦などしようはずもない。
『もちろん、こっちは全員捕まえたよ。だからそっちの様子を確認しようと思ったけど、全然電話出ないから心配してたんだよ』
雅紀の声が不機嫌になる。
どうやら、戦っている間に何度か着信があったらしい。
「すみません、ちょっと取り込んでいて」
『仕方ないけど、皆んなと連絡取れないから心配しちゃった』
「皆んな？まさか、奈美さんと連絡がとれないとか？」
櫻井はさっき逃げていったバンを思い出す。
もしかしたら、気づいた奈美がバンを追って、何か起こったのかもしれない。
『ううん、奈美ちゃんと潤ちゃんには連絡取れたけど、にのちゃんだけ何度電話しても出ないんだよ。約束した男たちの尋問してもらわないといけないのに』
「二宮先生が？」
櫻井は眉根を寄せる。
ここに来る際、二宮は「今日は体調悪いから、奈美ちゃんの運転する車には乗りたくない」と言い出し(奈美は「どういう意味ですか？」と不機嫌になった)自分の車でこの周囲に向かうことになった。
本来なら近くに車を停めて待機し、犯人たちを拘束後、はぐみのことを聞き出すために営業所に向かう計画だった。
『何してるんだろ、にのちゃん。今日、何となく様子がおかしかったんだよね。取り敢えずもう一度連絡とってみる。翔ちゃんもはぐみちゃんについて情報ないか聞いてみて。それじゃあ、あとで』
雅紀は一方的にまくし立てると、回線を切った。
二宮はどこに行ったのだろう？
櫻井はスマートフォンをポケットに戻すと、座り込んだままの倉田に近づいていく。
「それじゃあ、話を聞かしてもらおうか」
「話？」
「はぐみさんの話だよ。お前たちが拉致しているんじゃないのか？さっき言った『勘違い』ってどういうことだ」
「ああ、あの事か」
倉田の顔に苦笑が浮かぶ。
「お前さ、俺たちがあの女の家族を殺したうえ、監 禁して次元装置を作らせたって思っているんだろ。あの女がそう言ったんだろうけどな、全部嘘っぱちだ。あの女は自分から進んで装置を作ったんだよ」
「はぁ？何ではぐみさんが美術品の盗難に協力しなくちゃいけないんだ？」
櫻井は鼻の付け根にしわを寄せた。
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
