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「お前たちは誰なんだ？何で俺たちが今日、ここに現れると分かった」
「……日本セキュリティ保障の警備員だよ。まあ、今日だけ特別に雇われた非常勤だけどね。今回の爆破には、ユニバーサル警備に勤めていた人間が関わっていたのは明白だった。そして、爆破犯はなぜか古い絵画を用意していた。そこまで分かれば、『大印象派展』の美術品が狙いなのは予想がつく」
心から楽しそうに男が言う。
鴨志田は振り返って、金庫の奥を見た。
「あの爆弾は偽物か？」
「い、よく出来ているだろ。まあ、オリジナルを作ったはぐみさんせいさくだから当然だよな。ちなみに、隣の部屋に置かれていた本物の爆弾は、物騒だから回収させてもらったよ」
「……木箱は最初から空だったんだな」
鴨志田は血が滲むほどに唇を噛む。
「本物は今頃、本社の金庫室に厳重に保管されているよ。ちなみに、全部の木箱が空っていうわけじゃない。幾つかに隠しカメラを付けさせてもらった。さっきの君の告白もしっかり録画出来ているばすだ」
完全に嵌められた。
警察に逮捕されれば、もはや言い逃れは出来ないだろう。
この窮地から逃れる方法は……。
戦場での経験が、今とるべき行動を知らせる。
鴨志田は細く息を吐きながら首元を掻くと、手を素早くスーツの懐に滑り込ませる。
懐に隠したホルスターから拳銃を抜いた鴨志田は、銃口を中年の男に向け、ためらう事なく引き金を絞った。
しかし、銃声が響くことはなかった。
撃鉄が叩きつけられる鈍い音だけが虚しく空気を震わせる。
「なっ?!」
絶句しながら、鴨志田は弾倉を覗き込む。
いつの間にか、セットしていたはずの弾丸が消え、弾倉は空になっていた。
若い男が無言のまま手を開く。
数発の弾丸が零れ落ち、乾いた音を立てて床で跳ねた。
鴨志田の脳裏に、応接室を出るとき男とぶつかった光景が蘇る。
まさか、あの時に拳銃をすり、弾丸を抜いてまたホルスターに戻したというのか？
そういえば、あの男は猿渡ともぶつかっていた。
なぜ拳銃を持っていた猿渡が簡単に拘束されたかに気づき、鴨志田は立ち尽くす。
俺はいったい誰を敵に回したんだ？
軽いめまいを覚える鴨志田の前で、中年の男が表情を引き締めた。
「さっき、はぐみさんを拉致はしねいないと言っていたな。それは間違いないか？」
「……もし、本当はしていると言ったら？」
あの女を確保していることにすれば、相手を動揺させる事が出来るかもしれない。
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
