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すぐに返事は返ってこなかった。
『……その隠れ家、どこにある？本当にそんなものあるのか？』
「おい、忘れたのか？福岡市の……」
鴨志田は隠れ家の住所を口にする。
相手が少しずつ落ち着いてきている実感があった。
『あの女も、そこにいるのか？』
「あの女？」
『花本はぐみだ！
あいつもそこに監 禁しているのか?!』
「あいつは放っておこうって事で、話がまとまったじゃないか」
『嘘だ！あの女は計画のことを知っていた。だから殺すはずだっただろ！』
「猿渡、よく思い出してくれ。あの女が知っていたのは、最初の爆破の日時だけだ。見張ってた馬鹿が口を滑らしたからな。それ以外は、爆破場所も、時間も、俺たちの素性も全く知らなかった。たしかに、スケープゴートにして警察の捜査を混乱させるために殺しておくつもりだったけど、そんな事しなくても警察は俺たちまで辿り着けそうにない。だから、放っておくことに決めたじゃないか」
鴨志田は猿渡の記憶を呼び戻そうと、ゆっくり話しかける。
『嘘つけ！あの女を拉致したじゃないか！』
「そんな事してないよ。俺たちは事件のあと、隙を見て姿を消すんだ。今更あの女に関わっている暇なんかないだろ」
鴨志田が柔らかい声で言うと、再びインターホンから声が聞こえなくなる。
猿渡ならきだと正気に戻ってくれる。
鴨志田は確信していた。
『それじゃあ、お前は全部の責任を俺に押し付けて、殺すつもりはないっていうんだな？俺に責任はないって……』
インターホンから聞こえてくる野太い声が、一転して弱々しくなる。
「ああ、お前には何も責任ないさ。ビルを爆破したのも、あの女を殺そうとしたのも、美術品を盗むのも、こらから東海を殺すのも、全部俺が責任を持つ。俺が計画して、俺が実行させたんだからな。だから、安心してこの扉を開けさせてくれ。東海なら少し痛めつければ、すぐに暗証番号なんて吐くさ」
刻一刻と迫っている爆発の時間に焦りつつも、
鴨志田はゆっくりと語りかける。
あと一息で猿渡は扉を開ける。
その確かな手応えがあった。
『いま開ける……』
インターホンから聞こえてきた声に、
鴨志田は暗い天井を仰ぐ。
背後で息を殺して事態の行方を見守っていた２人の警備員も歓喜の声を上げた。
金庫内に錠が外れる音が響きわたった。
扉がゆっくり開いていく。
同時に金庫内の蛍光灯が灯った。
暗闇に慣れた目には強すぎる光量に、
鴨志田は目を細くしたら、
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
