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「彼は以前、このジムのエースだったみたいですね。日本ランキングでも一位までいったんでしたっけ」
大野のセリフに、会長の表情が緩んだ。
「よく調べているな。たしかにうちのエースだったよ。ウェルター級にしちゃあタッパはなかったが、それを補って余りあるスピードとパンチ力があった。デビュー戦から５試合連続で１ラウンドKOだぜ。その後も全試合KO勝ちでランキング一位まで一気に駆け上がったんだ」
脇腹に食らったボディーブローの痛みを思い出し、櫻井は顔をしかめる。
「たしか、タイトルマッチも行ったんですよね？」
大野が話を促すと、得意げだった会長の表情が一転して渋くなる。
「ああ、無敗のまま日本タイトルに挑戦したよ。相手は5回防衛している名チャンピオンだったけどな、俺は勝てると確信していた。あいつは日本チャンピオンどころか、世界も獲れるはずだったんだ」
顔を上げた会長は、天井あたりに視線を彷徨わせる。
「試合は一方的に雅次が押していた。５ラウンドにはダウンも獲って、ポイントで完全に上回ったまま最終ラウンドになったんだ。そのラウンドさえ終われば、判定であいつが新チャンピオンになるはずだった」
「けど、そうはならなかった」
大野に水を向けられた会長は、唇を噛んで頷いた。
「ああ、そうだ。あいつは連続KO勝利の記録にこだわっていた。俺が判定でいいって言っているのに、強引に倒しにいきやがったんだ。相手はチャンピオンだっていうのに、あの馬鹿、舐めやがって……」
「返り討ちにされたんですね？」
「ああ。あいつは普段は鋭いパンチ打つくせに、倒そうと力が入った時だけ右フックが大振りになる癖があったんだ。それまでの相手は、そんなテレフォンパンチでも倒しきれていたけど、チャンピオンはそうはいかなかった。狙いすました右ストレートのカウンターさ」
会長は勢いよく、両手を叩きつける。
パーンという破裂音が部屋に響いた。
「右と右のカウンターだ。一発で意識を飛ばされたよ」
「その一撃でKO負けを……」
櫻井の言葉に会長は、首を横に振る。
「いや、カウンターを食らって吹き飛ばされた雅次は運良く……いや、運悪くコーナーポストにもたれかかって倒れなかったんだよ。セコンドやってた俺の目の前にあるポストにた。だから、試合は続いた」
「けれど、意識はないんですよね？そのまま崩れ落ちるものじゃないですか？」
櫻井が訊ねると、
会長の顔に皮肉っぽい笑みが浮かんだ。
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pecopeco125(プロフ) - 5人でいる今、でした。タイトルミスすみません。 (2022年3月19日 1時) (
レス) id: 9e262934ff (このIDを非表示/違反報告)
pecopeco125(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらっています。 この度お願いがあり、メッセージ送りました。5人で今、のパスワード教えて頂きたいです。 よろしくお願いします！ (2022年3月19日 1時) (レス) id: 9e262934ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2022年1月9日 19時
