__ ページ49
・
「今回の爆破事件では特別捜査本部が立っているはずだ。つまり、普通に考えたら尾行してきた刑事たちは、そこに詰めている警視庁捜査一課か所轄書刑事課の刑事たちだ。しかしな、もしそうなら、尾行する相手が車に乗ったからって、すぐに覆面パトカーを用意して尾行を続けるなんて出来ないはずだ。奴らの仕事は基本的に聞き込みで、いつでも尾行できるような態勢にはなっていない」
「偶然、近くに覆面パトカーが待機していたんじゃないの？」
「それなら、奈美にまかれそうになった時、回転灯をつけてサイレンを鳴らすはずだ。けれど、そうはしなかったんだよな」
大野に水を向けられた櫻井は、
「はい」と頷く。
「追ってきたのは刑事じゃなかったってこと？」
雅紀の顔に困惑の表情が浮かぶ。
「いや、そうとは限らない。尾行のプロで、たとえまかれそうになっても、目立たないことを優先させる刑事たちがいる。……公安だ」
「公安……」
櫻井はその言葉をおうむ返しした。
警視庁公安部。
テロを起こす危険のある団体の監視などを主な任務とする組織。
粘着質な不安が櫻井の全身にまとわりつく。
「まあ、あの爆破事件はテロの疑いもあるから、当然公安も動いているだろうね。つまり、追いかけてきた男たちが公安の刑事だったってこと？」
「いや、それもすっきりしない。公安なら尾行のプロだ。いくら尾行対象が走り出しても、走って追いかけてくるわけがない。尾行で最も大切なのは、相手に気づかれないことだからな。それにいくら奈美でも、公安相手ならそう簡単に振り切れないはずだ」
「じゃあ、誰が追いかけてきたっていうの？」
雅紀の問いに答える者はいなかった。
再び、部屋が重い沈黙で満たされる。
「けどさ、記憶喪失って厄介だね。いつもなら、にのちゃんが顔見ただけで、その人が犯人かどうかすぐに分かるのにさ」
その場の空気をとりなすように雅紀が声を上げると、二宮の眉根が寄った。
「今回だって分かりますよ。
赤羽さんは犯人なんかじゃないって」
「あれ、何でそんなこと言い切れるの？赤羽さんだって自分が犯人かもって悩んでいるんでしょ」
雅紀の顔にいやらしい笑みが広がっていく。
「なんでって……」
二宮は露骨に動揺しながら言葉を詰まらせる。
「恋だね」
「違う！」
両手を胸に当て艶っぽく身をくねらす雅紀に、二宮は声を荒らげた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 895人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2021年11月9日 16時
