第３章−６− ページ10
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そろそろか……。
田村勝弘は午後９時過ぎを指す腕時計から視線を上げると、木々の隙間から見える別荘を眺める。
別荘の窓からは黄色い光が漏れていた。
街からはかなり離れた林の中に立つ別荘、たしかに隠れ家としては適しているかもしれない。
しかし逆にこんな寂れた所では、たとえ大声を上げたとしても近所の住民に気づいてもらうことはできない。
日が出ている頃から、別荘前の車道には
車通りが少なかった。
この１時間でも数台しか通過していない。
これならもう作戦に入ってもいいだろう。
あまり時間をかけると、東京で報告を待っている後藤田にどやされる。
田村は数メートル先の木の陰に身を潜めている菊野に目配せをする。
菊野は頷くと、ジャケットのポケットからサングラスとマスクを取り出した。
田村も同じようにマスクとサングラスを取り出し装着する。
ただでさえ暗い林の中にいるというのに、サングラスをすることで足元もよく見えなくなる。
しかしそれも仕方がなかった。
間違って誰かに顔を見られるわけにはいかないのだから。
もし顔が割れたりしたら、今度は俺が鍋島のような目に遭うかもしれない。
２日前に菊野とともに絞め殺した男を思い出した田村は、軽く頭を振る。
いや、後藤田さんが鍋島を始末するように指示を出したのは顔が割れたからだけではない。
あいつが底抜けの間抜けだったからだ。
田村の口から舌打ちが漏れた。
住吉美寿々のマンションで鍋島はランジェリーパブのマッチを落とした。
そのせいであの医者達は後藤田貿易にたどり着き、さらに密輸にまで気づいた。
まさか鍋島が『後藤田貿易の役員』だなんてふれ回り、挙句の果てに名刺まで作っていたとは思わなかった。
そのことを知ったときは、めまいすら覚えたものだ。もともと俺はあいつを使うのに反対だったんだよ。
鍋島のことを思い出すと苛立ちがぶり返してくる。
長年、後藤田の下で汚い仕事を引き受けてきた自分や菊野と違い、鍋島は去年から『仕事』に参加するようになった。
「こいつは腕っ節が強いし、どんなことでもやるから」と後藤田が連れてきたのだ。
たしかに鍋島は体格も良く、汚れ仕事も躊躇なくやり遂げることができる残酷さを持っていたが、この『仕事』に最も重要な知性が抜け落ちていた。
処理を任せた川奈の腕を街中の公園に埋めるという信じられないことをして結果、犬に掘り返されるという失態まで演じた。
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ここここ(プロフ) - はじめまして！！！最近この作品と出会いまして、面白すぎて一気読みしました！読みながら「この人が怪しい、いやあの人も怪しいな…」と推理しながら読みましたが、まだまだ私の推理は稚拙なものでした…笑 続編も楽しみです！ (2021年11月18日 19時) (
レス) @page44 id: 6c5860f770 (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - stormさん» 読んで頂きありがとうございます。続編の方も宜しくお願いします！ (2021年11月12日 12時) (レス) id: 53c29ae25f (このIDを非表示/違反報告)
storm - どうも！とうとう完結か…とfin.の文字に寂しさを感じていた私ですが、続編という文字を見て舞い上がりましたw本当に完成度が高くて、すごくハラハラドキドキさせられる、素晴らしい作品でした。完結までお疲れさまでした！そして続編でもお世話になります！ (2021年11月9日 22時) (レス) @page43 id: 5bdda0872c (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - 彌生さん» 初めまして。読んで頂きありがとうございました。是非、続編でもドキドキを味わって頂けたらと。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - あきらさん» 初めまして。サスペンスが好きなんですね。楽しんで頂けたようで良かったです。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年9月24日 20時
