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聡子から手ほどきを受けた櫻井はみるみるその実力を上げていった。
聡子が何か月も必死に練習して身につけた技術を櫻井がものの数日でマスターしたのを見て、激しい敗北感をおぼえもした。
「……別に俺は天才なんかじゃないよ」
「なに言ってるのよ。昨日、後藤田に万年筆を仕込んだでしょ。それに鍋島の時もそう。あなた、ランジェリーパブの紙マッチを落としたとか言っていたみたいだけど、あれ嘘よね？本当は一瞬で鍋島のポケットを探ったんでしょ」
「そんなスリみたいなこと上手くたって自慢にならないよ」
櫻井は首を左右に振った。
「ところで、スマホでの盗聴に気づいたのもあなた？」
聡子は軽い声で訊ねる。
万年筆の盗聴は本命ではなかった。
あの盗聴器は発している電波を調べられたら容易に見つかってしまうが、櫻井のスマートフォンに仕込んだスパイアプリはそう簡単に見つかることはないはずだった。
「……俺だよ。昨日、後藤田が逮捕されたのを確認して帰るとき、聡子さんが事件にかかわっているんじゃないかって気づいたんだ。もしそうなら、もう一つ盗聴器を仕込んでいる可能性が高いって思った。目立つところに
人の意識を引きつけて、その死角にタネを仕込む。それが手品の基本だって教えてくれたのは聡子さんだろ」
「あら、ちゃんと覚えていたのね。嬉しい」
「……三森教授も意識を引きつける道具だったんだろ？」
櫻井の声が低くなる。
「ええ、そうよ」
聡子はあっさりと認める。
ここにいたっては、もはや誤魔化したところで意味はない。
すでに勝負はついたのだから。
「裏の仕事を始めるとき、最初から決めていたの。何かの時は三森教授をスケープゴートにしようってね。だから、時間をかけて慎重に三森教授の悪い噂を流したし、お金を隠している海外口座も教授の名前で登録した。あの万年筆に盗聴器を仕込んだのも、教授に疑いを向けるため」
「……三森教授はいまどこに？」
「分かっているでしょ？」
聡子の回答を聞いて櫻井は唇を固く噛んだ。
人の好い三森は
本当に使い勝手のいい男だった。
スケープゴートに仕上げられていることに全く気付くことなく「家族の病気のことで相談に乗って欲しがっている」と鍋島を紹介したら、簡単に信じて会ってくれた。
その光景を櫻井に見せつけることで、三森が一連の事件に関わっていると疑わせることができた。
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ここここ(プロフ) - はじめまして！！！最近この作品と出会いまして、面白すぎて一気読みしました！読みながら「この人が怪しい、いやあの人も怪しいな…」と推理しながら読みましたが、まだまだ私の推理は稚拙なものでした…笑 続編も楽しみです！ (2021年11月18日 19時) (
レス) @page44 id: 6c5860f770 (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - stormさん» 読んで頂きありがとうございます。続編の方も宜しくお願いします！ (2021年11月12日 12時) (レス) id: 53c29ae25f (このIDを非表示/違反報告)
storm - どうも！とうとう完結か…とfin.の文字に寂しさを感じていた私ですが、続編という文字を見て舞い上がりましたw本当に完成度が高くて、すごくハラハラドキドキさせられる、素晴らしい作品でした。完結までお疲れさまでした！そして続編でもお世話になります！ (2021年11月9日 22時) (レス) @page43 id: 5bdda0872c (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - 彌生さん» 初めまして。読んで頂きありがとうございました。是非、続編でもドキドキを味わって頂けたらと。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - あきらさん» 初めまして。サスペンスが好きなんですね。楽しんで頂けたようで良かったです。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年9月24日 20時
