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今回の騒動の発端も鍋島の凡ミスからだった。
鍋島が密輸品について漏らしたせいで、川奈は自分の腹から『あれ』を取り出そうなんて思いついたに違いない。
そもそも、『運び屋』として川奈を連れてきたのも鍋島だった。
知り合いの高利貸しから、もはや首をくくるしかないような状態になっている川奈を紹介されたらしいが、その背景についてほとんど調べていなかった。
自分や菊野が『運び屋』を選ぶ時は、その男が裏切ることがないか、もし裏切れば誰を脅せばいいかなどを慎重に調べていた。
たしかに今回の密輸は唐突に始まったため、時間をかけて人選する余裕がなかった。
だからって、
鍋島が連れて来た男を使うなんて。
あのとき後藤田にしっかりと言っておけば。
胸によぎった後悔を、田村は唇を噛んで振り払う。
後藤田もこれで分かってくれたはずだ。
本当に頼りになるのは俺と菊野だけだと。
だからこそ鍋島を切る決断をしてくれた。
これからは俺達で後藤田を支えていこう。
「おい、行かねえのかよ」
動かない田村に焦れたのか、菊野が声をかけてくる。
「ああ、悪い。行くぞ」
田村はゆっくりと別荘に向かって足を進みはじめた。
「しかしさ、あの医者達、本当に抜けてるよな。あいつら、最後まで盗聴されたことに気付いてなかったぜ。全部『先生』の予想どおりだ」
隣を歩きながら
菊野がくぐもった笑い声を漏らす。
「たしかにな」
田村も唇の両端を上げた。
『先生』があの櫻井とかいう医者が愛用している万年筆に仕込んだ盗聴器、あの医者達は最後までそれに気づくことはなかった。
最初『先生』が万年筆に盗聴器を仕込んだと聞いた時は、もっと常に身につけているものに仕込むべきじゃないかと思った。
しかし『先生』は自信満々に「彼は万年筆をいつも持っているよ」と忍び笑いを漏らした。
そしてそれは正しかった。
粗悪品なのか音質はかなり悪く、さらに数百メートルも離れると電波を受信できなくなったが、櫻井が常に持ち歩いていたお陰で十分に情報を得ることができ、あの医者達に先回りできた。
いつも大きなマスクで顔の半分を隠した『先生』。
腹を切ってその中にブツを詰めて密輸する方法を教えてくれたのもあいつだった。
あいつの正体は誰なのだろうか？
一度だけ、あいつが『運び屋』の腹から袋に入った麻薬を取り出すのを見たことがある。
その手際は素人の自分から見ても
鮮やかだった。
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ここここ(プロフ) - はじめまして！！！最近この作品と出会いまして、面白すぎて一気読みしました！読みながら「この人が怪しい、いやあの人も怪しいな…」と推理しながら読みましたが、まだまだ私の推理は稚拙なものでした…笑 続編も楽しみです！ (2021年11月18日 19時) (
レス) @page44 id: 6c5860f770 (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - stormさん» 読んで頂きありがとうございます。続編の方も宜しくお願いします！ (2021年11月12日 12時) (レス) id: 53c29ae25f (このIDを非表示/違反報告)
storm - どうも！とうとう完結か…とfin.の文字に寂しさを感じていた私ですが、続編という文字を見て舞い上がりましたw本当に完成度が高くて、すごくハラハラドキドキさせられる、素晴らしい作品でした。完結までお疲れさまでした！そして続編でもお世話になります！ (2021年11月9日 22時) (レス) @page43 id: 5bdda0872c (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - 彌生さん» 初めまして。読んで頂きありがとうございました。是非、続編でもドキドキを味わって頂けたらと。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - あきらさん» 初めまして。サスペンスが好きなんですね。楽しんで頂けたようで良かったです。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年9月24日 20時
