__ ページ43
・
「けれど、川奈が死んでから半年以上経って
いるじゃん。なんでいま頃になって？」
雅紀が独りごちるように言うと、
大野は渋い表情を浮かべる。
「もしかしたら、俺達が川奈雄太について調
べはじめたからかもな」
「えっ、大ちゃん、どういうこと？」
「鍋島達は、藤原のときも住吉美寿々のとき
も俺達の一歩だけ先を行っていた」
「……情報が漏れているってこと？」
雅紀の声が重量感のあるものに変化した。
「その可能性もなくはない」
大野は歯切れ悪く言う。
そして、あごを撫でると視線を
櫻井に向ける。
「勝本病院の院長は知っているか？」
「え？ああ、はい。何度か会ったことはあり
ます。60過ぎの先生ですけど……」
「その院長は外科医か？腹腔内の袋を破らな
いで摘出できる技術があると思うか？」
大野の質問の意図を悟った櫻井は
首を左右に振る。
「いえ、院長は内科医でした。そんな高度な
技術は持っていないはずです」
「となると、院長は病院の施設を提供していただけで、運び屋の腹からブツを摘出していたのは別の人物っていうことになるな」
大野は痛みを堪えるかのような表情を
浮かべる。
その頭に誰の顔が浮かんでいるのか、
櫻井には手に取るように分かった。
「院長の親戚で一流の外科医、頻繁に東南アジアに行っていて黒い噂があり、さらに海外の隠し口座に多額の預金を隠していた……。もう役満じゃん」
黙り込んだ大野を見て、雅紀が
ため息交じりに言う。
「三森教授、それが後藤田貿易の密輸を手伝っている外科医だよ。大ちゃんの友人かもしれないけど、ここまで条件が揃ったら疑わないわけにはいかないでしょ」
「ああ、……そうだな」
大野の口元に力がこもる。
「あくまで今の話は大ちゃんが思いついた仮説で、なにも証拠なんてないでしょ。さすがにこれだけで、勝本病院の院長とかナース、あとは後藤田貿易の社長を尋問するのは問題になる。
けど、大ちゃんが『友人として』三森教授に話を聞くことぐらいできるんじゃない。そしてその場に、にのちゃんを連れて行きさえすれば、今の仮説が正しかったのかははっきりする。違う？」
雅紀の口調に問い詰めるような響きはなく、淡々と事実を確認しているかのようだった。
大野は雅紀と視線を合わせる。
「……いや、そのとおりだ。
俺が三森教授から話を聞こう」
大野の声はどこか哀しげに櫻井には聞こえた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 744人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あきら(プロフ) - 初めまして楽しく拝見してます。リクエスト募集中と云う事なので、私は山担なのでそれも赤さんを全力で守る青さんが大好きです。なので赤さんが弁護士で危険な案件に係わって、それを元刑事の青さんが助ける!サスペンスドラマ大好きなので、ハラハラドキドキしたいです (2021年9月23日 18時) (
レス) @page47 id: 0cb62e1ff0 (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - いちごさん» 嬉しすぎます！お気になさらず、ぜひ是非楽しんでいってください！ (2021年9月23日 17時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - ありがとうございます。作品とても楽しくて夢中になって読ませて頂いていました。そそそそれなのに。本当にごめんなさい。 (2021年9月21日 20時) (レス) id: f705c60b1b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - いちごさん» 全然大丈夫です！！評価ボタンを押そうとして頂いただけで幸せです👏🏻 (2021年9月21日 18時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 10を押そうとした時猫が来て手が滑りました。ごめんなさい。 (2021年9月21日 14時) (レス) id: f705c60b1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月25日 21時
