大野クリニックで祝杯を２【ARS】 (ページ6)

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「ま、待って下さいよ。こっちは五人しか
いないんですよ。それだけであいつら全員を
相手にするつもりですか?!」

「なに言っているんですか？」

二宮が呆れ声で言う。

「戦うのは君と大野さんの二人だけ。
僕達にそんな野蛮なこと出来るわけない
でしょうが」

言葉を失う櫻井の肩を、やけに楽しそうな
大野がぽんと叩いた。

「そういうことだから、二人で頑張るぞ。
大丈夫だって、総合格闘技のプロライセンス
持っているんだろ」

就職面接のとき格闘技歴について訊いてきた
のは、最初からこういうことを想定していた
からなのか?!

櫻井が言葉を失っているうちに、男達は
ほんの数メートルのところまで
近づいてくる。

その半分ほどはカジノスタッフの制服である
黒いスーツ姿だったが、残りの男達は
いかにも『街のチンピラ』といった、ラフな
風体をしていた。

着ているシャツの袖からタトゥーがのぞいて
いる者もいる。

「なにか用かな？」

大野が一歩前に出ながら、
軽い口調で訊ねる。

「金を返してもらおうか」

男達の中からブラックスーツを着た男が
出てくる。

30歳前後の小太りな男だった。

そのすぐ後ろには、身長が190センチはある
であろう大男が立っている。

着ているシャツが筋肉で、はち切れそうな
ほどに張っていた。

体重はゆうに三桁に達しているだろう。

あのカジノのバウンサーといったところ
だろうか。

「なんで返すんだい？
俺達が賭けで稼いだ金を」

大野は唇に薄い笑みを浮かべる。

「大野さん達は全部すったけどね」

ちゃちゃを入れた二宮を、大野は振り返って
軽く睨む。

二宮は首をすくめて口にチャックをする
ような仕草を見せた。

「俺のカジノじゃな、
イカサマは御法度なんだよ」

小太りの男は大きく舌を打ち鳴らした。

「おかしな因縁つけないでくれ。俺達は
イカサマなんかしないで、ちゃんと勝った
んだ。このカジノは大勝ちした客からは
こうやって金を脅し取るのかな？」

「……カウンティングは、ラスベガスでは
イカサマの一種としてみなされているよ」

「にのちゃんのもある意味イカサマだよね。
相手の考えていること全部分かるんだもん」

今度は松本と相葉が余計な口を挟む。

大野は再び振り返って、スタッフ達に
湿った視線を投げかけた。

「ぐだぐだうるせえよ。いいから金置いて、
二度と俺のカジノに顔出すんじゃねえ。
さもないと……」

「さもないと、どうするんだい？」

小太りの男の啖呵を大野が遮る。