大野クリニックで祝杯を２【ARS】 (ページ36)

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櫻井達は重い足取りで出口へ向かう。

その時、思い出したように藤原が「なぁ！」
と声をかけてきた。

「おれがここに入院しているってこと、
外にはバレていないんだろうな。特にサツと
は関わりたくねてんだよ。色々となんだ……
面倒だからよ」

「医者には守秘義務がある。
安心していいよ」

大野がつまらなそうにつぶやくと、
藤原は安堵の息を吐いた。

「ありがとよ。あんたらは命の恩人だ。
退院できたら、たんまりお礼させて貰うよ。
色々手広く事業をやっているから、
金はあるんだよ」

得意げに鼻を鳴らす藤原を見て、
大野は皮肉っぽい笑みを浮かべた。

「退院したときも、
その事業が残っていると良いね」

「あ？どういう意味だよ」

藤原の声が低くなる。

「俺達は患者の情報は絶対外に漏らさない。
けれど、どこかの港で定期的に行われる違法
カジノについての情報は善良な一市民として
通報しないわけにはいかない。賄賂を貰って
いる警官が誰とか、そこの責任者から聞き
出した情報すべてをね」

「ちょ、ちょっと待て。ふざけんな、
そんなことしたらただじゃ……」

「あんまり興奮すると傷に障るよ」

大野は軽く片手を挙げると、他のスタッフ達
を引き連れて病室から出る。

閉まった扉の奥から藤原の怒声が
響いてきた。