大野クリニックで祝杯を２【ARS】 (ページ30)

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第２章－２－ページ30

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聡子と食事をした翌日の午前10時前、
櫻井は青山の路地を一人で歩いていた。

昨夜、雅紀に午前10時頃に、青山第一病院に集合するように指示されていたのだ。

「あっ、翔ちゃん、おはよう」

声をかけられ振り向くと、十数メートル後ろ
に相葉と二宮が歩いていた。

「おはようございます」

珍しい組み合わせだなと思いながら、
櫻井は挨拶をする。

「にのちゃんともそこで会ったんだよ。
せっかくだから病院まで一緒に行こうよ」

雅紀は小走りに近づいて、櫻井の
隣にやってくる。

二宮もあくびをしながら雅紀のあとを
追ってきた。

３人は並んで歩きはじめる。

「松本先生は一緒じゃないんですか？」

櫻井は周囲を見回しながら言う。

いつも二宮は、松本と一緒に行動している
イメージがあった。

「別に僕は潤くんの保護者じゃないから」

二宮がつまらなそうにつぶやく。

いや、どちらかと言うと、あなたの方が
保護される側に見えるんだけど……。

小柄で童顔だから。

櫻井が心の中で突っ込みを入れると、
二宮は眉間に深いしわを刻んだ。

「……子供みたいに見えて悪かったですね」

また正確に思考を読まれ、
櫻井は「いえ、その……」と口ごもる。

「仕方ないじゃん、にのちゃん。
どう見ても潤ちゃんの方が保護者に見える
って。だって、潤ちゃんあんな格好だから
老けて見えるし、にのちゃんは……」

雅紀は口元を押さえてくくっと
忍び笑いを漏らす。

二宮の眉間のしわが深くなる。

「潤くんも俺の保護者なんかじゃない！」
「そうだよね、本当は恋人なんだよね」
「違う！」

おどけて言う雅紀に向かって
二宮は怒鳴り声をあげる。

「何度も言っているじゃないですか！
俺は潤くんの主治医なんだよ」

「主治医ですか？」

櫻井が訊ねると、二宮は小さく頷いた。

「あの人、抑鬱症状が酷いでしょ。ちゃんと
僕がついて見てあげないと仕事もできない、
というかベッドから起き上がることもできな
いような状態になるんです。だから僕が
主治医としてカウンセリングとかして、
あの人の精神状態を安定させているんです。
まあ、低め安定が何とかなんですけどね」

「けど、学生時代からずっとなんでしょ。
それってやっぱり愛なんじゃ……」

「腐れ縁！」

二宮の怒声が、雅紀の声を遮った。

「あの、それで松本先生は……？」

櫻井はおずおずと口を挟む。

「潤くんなら、もう病院に行って藤原を
人工呼吸器から離脱させているよ」

二宮が苛立たしげに言う。