大野クリニックで祝杯を２【ARS】 (ページ28)

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「そんな飲み方すると酔うよ。聡子さん
あんまり酒強くないんだから」

「いいじゃない」

聡子は艶っぽい流し目をくれる。

「酔い潰れたら翔の家に泊めてよ。
……この前みたいにさ」

一瞬、細くしなやかな聡子の裸身が櫻井の
脳裏をよぎり、続いて奈美の笑顔が
浮かんだ。

喉から「うっ……」と声が漏れる。

「あれーなにその反応？
もしかして好きな子でも出来たの？」

「いや、別にそういうわけじゃ……」

櫻井はしどろもどろになる。

「なによ、この前は私とあんなことして
おいて、すぐに新しい女の子見つけるなんて
この浮気者」

聡子はにやにや笑いながら
冗談めかして言う。

「浮気者って、聡子さん……
俺のこと振ったじゃないか」

櫻井は口を尖らせながら、ぶつぶつと
口の中で文句を転がした。

２ヶ月前、今後のことについて聡子に食事を
しながら相談した際、酔いつぶれて「家に
泊めろ！」とくだを巻く聡子を、櫻井は仕方
なく自宅に連れて行った。

肩を貸さないと歩けなくなっていた聡子を
ベッドに寝かせようとすると、聡子は唐突に
櫻井の首に腕を回して唇を重ねてきた。

数十秒の熱い口づけを交わしたあと、聡子は
微笑みながらシャツをゆっくりと脱いでいっ
たのだった。

翌朝、櫻井が目を覚ますと、聡子は既に服を
着てソファーで雑誌を読んでいた。

櫻井は慌てて下着を穿いてベッドから起き、
「それじゃあ、そろそろ帰るね」と言う
聡子の手を握ると、順番が逆になったけど
正式に付き合って欲しいと伝えた。

しかし、聡子は櫻井の頬に軽く口づけすると
「翔ならもっといい女の子見つかるって」と
言い残して玄関に向かったのだった。

「だってさ、翔って、なんていうか『弟』
っていう感じで、付き合うっていうのがぴん
とこなかったのよね」

「なら、なんで誘ったんだよ。
俺の気持ち知っていただろ」

櫻井の口調に不満が滲む。

櫻井が聡子に告白したのは、２ヶ月前が
初めてではなかった。

学生時代にも２回ほど交際を
申し込んでいたのだ。

しかしそのたびに、聡子に「一人前になった
ら考えてあげる」と軽くいなされていた。