大野クリニックで祝杯を２【ARS】 (ページ16)

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迷いながらも、櫻井はドアノブに
手をかける。

エレベーターの扉が開き、中が見える。

櫻井の口から「えっ?!」という驚きの声が
漏れた。

エレベーターに乗っていたのは
一人ではなかった。

マスクとサングラスで顔を隠した３人の男と
力なく床に座り込んでいる金髪の男の４人が
狭いエレベーターに詰め込まれていた。

金髪の男の顔は腫れ上がり、頭からは
血が流れている。

あの男達は誰なんだ？

混乱している櫻井の前で、男達は金髪の男を
引きずるようにエレベーターから出す。

気を失っているのか、金髪の男はまったく
抵抗しなかった。

顔を隠している男の一人が無造作に、
横たわる金髪の腹に蹴りを叩き込む。

金髪の男が弱々しく咳き込んだ。

「やめなさい！」

辺りに響き渡った甲高い声で、
櫻井は我に返る。

見ると、いつの間にか奈美が車外に出て
男達を睨みつけていた。

櫻井は慌ててドアを開けて車を降りた。

３人の男は顔を見合わせる。

サングラスとマスクで顔が隠れているので
男達がどんな表情をしているのか
全く分からなかった。

「櫻井さん、あの人を助けないと」

小声で囁く奈美に、櫻井は小さく頷く。

何が起こっているのかまったく分からないが
少なくとも拉致されかけている男をほうって
おくわけにはいかない。

櫻井は警戒しながら、
男達の次の行動を待つ。

このまま倒れている男を置いて去ってくれ
ればいいが、そうでなければまた一戦を
交えないといけないかもしれない。

男の一人がジャケットの懐に手を入れた。

そこから取り出されたものを見た瞬間、
櫻井は目を疑った。

駐車場を照らす蛍光灯の光を鈍く反射する
無骨な金属の塊、オートマチックの
拳銃が男の手にあった。

銃口が櫻井達に向けられる。

「奈美さん！」

櫻井は叫びながら奈美に飛びかかった。

小さく悲鳴をあげた奈美とともに、櫻井は
その場に倒れ伏せる。

鼓膜に痛みを感じるほどの轟音が辺りに
響き渡った。

銃声が地下駐車場の壁にこだまし、やがて
小さくなっていく。

櫻井は目をゆっくりと開くと、体の下にいる
奈美を見る。

「奈美さん、大丈夫？怪我はない？」
「は、はい……。櫻井さんは？」

奈美はこわばった表情を浮かべながら
頷いた。

「俺も大丈夫」

櫻井が答えると、背後からエンジンの
唸り声が聞こえてきた。