大野クリニックで祝杯を２【ARS】 (ページ11)

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20メートルほど先で急に速度を落とした車
は横滑りするように回転しながら近づいて
きて櫻井達の数メートル前で側面を見せて
停車した。

車の後ろにいたバイクは、急に回転しだした
車に驚いたのか次々に急ブレーキをかけ
転倒していく。

目の前に停車した車を見て、櫻井は
「あっ?!」と声をあげる。

さっきまでは逆光になっていたため
分からなかったが、それは大野クリニックの
キャンピングカーだった。

「みんな、乗ってください！」

奈美が運転席の窓から顔を出す。

雅紀と松本がキャンピングカーの後部に
駆け寄り、扉を開ける。

それと同時に、大野が小太りの男に駆け寄る
と、その左腕を後ろ手にひねり上げた。

「痛え！痛えって！放せよ！」

男が叫び声をあげるが、肘と肩の関節を
完全に極められ、ほとんど動くことが
できなかった。

大野は小太りの男を車内に押し込む。
松本と雅紀が続いて車内に入っていく。

「ほら、なにぼーっとしているんだよ。
さっさと乗ってよ。
置いていかれたいわけ？」

二宮に促され、櫻井は慌てて
キャンピングカーに乗り込んだ。

「奈美ちゃん、全員乗ったよ」

後部ドアを閉めながら、雅紀が声をあげる。

「分かりました。
皆さん、つかまっていて下さい」

運転席の方から、奈美の声が聞こえてくる。
大野達は慌てて手近なものにつかまった。

エンジンがうなりを上げ、車が急発進する。

壁の取っ手に向かって手を伸ばそうとして
いた櫻井は、その加速にバランスを崩し、
でんぐり返しでもするかのように
一回転した。