__ ページ5
・
少年に連れられて入った扉の奥は、
シックなバーになっていた。
太い木の幹を削って作られた
カウンターの奥には、無数の酒瓶が
収められた棚が壁を覆いつくしている。
高級感のある革張りのL字型ソファーと
木製のローテーブルが３セット、
棚の反対の壁に沿って置かれている様子が、
間接照明の淡い光に映し出されていた。
「大野さん。連れてきたよ」
櫻井が室内を見回していると、
前を歩く少年が声をあげた。
「おう、ニノ。ご苦労さん」
奥の方から低い声が響いてくる。
そちらに視線を向けると、
10席ほどあるカウンター席の一番奥に
男が座っていた。
男は席から立ち上がり、
櫻井に近づいてくる。
これまた小柄な男だった。
身長170センチの櫻井よりも
わずかに背が低い。
肩幅は広く、体が引き締まっているのが
ジャケットの上からでも見て取れた。
年齢は40前後といったところだろうか。
「院長の大野智だ。よろしく」
男は右手を差し出してくる。
「あっ、えっと……。櫻井翔です」
櫻井はとりあえず名乗りながら、
大野と名乗った男の手を握る。
想像以上に厚みのある手だった。
次の瞬間、櫻井の顔がゆがむ。
大野が手を握りつぶさんばかりに
力を込めてきていた。
痛みを感じた櫻井は
反射的に前腕に力を込め、
思い切り握り返す。
大学時代、総合格闘技にはまり、
毎日のようにジムに通っていた。
プロのライセンスも取得している。
医者になって５年が経ったいまでも、
時間が許せばジムに顔を出し、
現役の選手達とスパーリングをして
汗を流していた。
腕力には自信がある。
櫻井は歯を食いしばり力を込め続ける。
しかし、大野は笑みを浮かべたままだった。
「大野さん、なにやってんの？
馬鹿なことやってないで、さっさとしてよ」
少年が呆れ声で言った瞬間、
大野は櫻井の手を離す。
櫻井は一歩後ずさった。
「悪い悪い。あんまり良い体格を
していたもんだから、ついね」
大野は軽い口調で言いながら、
屈託のない笑顔を浮かべる。
「なにが『つい』だよ。これだから脳筋は。
筋肉じゃなくて口で会話してよね」
少年は大野に冷たい視線を浴びせかけると、
身長が足りないためジャンプをして
カウンター席に座った。
大野は軽く肩をすくめると、
視線を少年から櫻井に移す。
「それじゃあ櫻井くん、
さっそく面接をはじめようか」
大野は少年の隣の席に腰掛け、足を組んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 756人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます！ここから更に急展開ですのでお見逃し無く！！ (2021年5月25日 22時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます！ (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開！！ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています！ (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月15日 12時
