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・
「精神的な疼痛？」
櫻井が反射的につぶやくと、
二宮が鼻の頭を掻いた。
「医者なら知っているでしょ。
人間の精神と体が密接に結びついている
ことをさ。精神が怒りや恐怖とかの
ネガティブな感情に支配されたとき、
体に様々な症状が出ることがある。
小笠原さんの場合は、それが疼痛として
現れたんですよ」
「先週、精神的に不安定になるような
ことがあったってことですか？」
櫻井の問いに、二宮は重々しく頷く。
「そう考えて、僕は小笠原さんに
質問したんです。先週何かあったんじゃ
ないかってね。そうしたら小笠原さんが、
『……大野先生に相談したいことがある』
とか言い出しちゃったんですよ。だから
こうなっているわけです」
櫻井は眉をひそめる。
末期癌の人間が外科医にどんな相談を
するのか分からなかった。
「べつに小笠原さんは、
外科医としての大野さんに相談したい
ってわけじゃないんだよ。大野さんの、
というかクリニックの裏の顔を
頼っているわけ」
櫻井が考えていることを的確に
読み取った二宮は、大きくため息をつく。
「あの、……裏の顔って、
どういうことですか？」
櫻井が困惑していると
運転席から奈美の声が響いた。
「小笠原さんのお家に着きましたよー」
車が急停止し、
櫻井の体は大きく傾いた。
・
十畳ほどの和室。
縁側の奥には日本庭園が広がり、
池には錦鯉が優雅に泳いでいる。
小笠原雄一郎の自宅に到着すると、
櫻井達は家政婦にこの部屋へと通された。
部屋の中心に敷かれた布団には、
この屋敷の主である小笠原雄一郎が
横たわっている。
畳に正座しながら櫻井は小笠原を観察する。
頬骨が目立ち、眼窩は落ちくぼんで
眼球が飛び出しているかのように見える。
布団からのぞく腕は、細く乾燥していた。
痛みが強いのか、時々
苦しそうに顔をしかめている。
布団の脇に置かれた点滴棒には、
点滴袋などがセットされていて、
小笠原の首筋に繋がる
点滴ラインへと薬を流し込んでいた。
その中には、疼痛管理用の
モルヒネも含まれていた。
「すみません、大野先生。
……わざわざこんな所まで来ていただいて」
小笠原は横たわったまま
弱々しい口調でつぶやく。
「いえ、お気になさらないでください」
布団のそばで正座している大野は、
柔らかく微笑んだ。
「……大野先生、私の話を
聞いてもらってもいいですか」
虚ろな目で天井を見上げながら
小笠原はつぶやく。
大野はゆっくりと頷いた。
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未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます！ここから更に急展開ですのでお見逃し無く！！ (2021年5月25日 22時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます！ (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開！！ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています！ (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月15日 12時
