失恋日記【AS】 (ページ1)

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＊失恋ページ1

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「恋に思い悩んだりできる日常があるってことは幸せだよね。悩める時期が一番いい時期なんじゃない？俺は恋に振り回されるようなことはないよ」

これは俺の凄く身近な人が以前語っていた言葉だ。

世の人たちはこの言葉に対して「恋愛に興味はないのか」「なんかイメージと違ったな」と様々な感想を持った。

そして、俺もその内の一人だった。

「追われるより、追う方が好き」
「一番大事なのは俺のこと好きかどうか」
「苦手なのは熱い人。考えを押し付けられたりするのも苦手」

彼の恋愛観は大人になるに連れて変化した。

そして俺もまた幾つかの恋を経験していた。

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日々が過ぎてゆく。

あの頃は真っ白だった手帳が今や自分自身では管理できないほどに埋め尽くされている。

忙しい毎日が幸せで、日常になっていた。

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そんなある日、彼は真面目な顔で「話したいことがある」と言った。

そこにいた４人はこの後の予定がないことを確認して二つ返事で了承した。

彼のことだ。俺たち４人全員が空いているということは事前に確認済みだったのだろう。

仕事を終えた俺たちは彼が予約したという店に入った。

そこは何度か彼の紹介で来たことのある少しこじゃれた店で、職業柄プライベートを大切にしたいと考える俺達にはぴったりだった。

適当につまみになるようなものを頼んで、乾杯する。

仕事終わりの酒にそれぞれが幸せそうな表情を浮かべる。

けれど、彼だけは珍しく一度口を付けたきりジョッキを置いた。

そんな彼の様子に俺たちも続くようにジョッキを置いた。

「それで話って？」

しびれを切らした一人が彼に尋ねた。

「そのことなんだけど
俺、結婚することにした」

天邪鬼と言われ本音をさらけ出す事も滅多にしない彼が、今はとても男らしく見える。

開いた口が塞がらないとはこのことか。

ぐるっと他の皆を見ても同じような顔をしていた。

「おめでと、え、ほんとに？ほんとなの？」
「まじか、おめでとう」
「おめでとう。幸せになれよ」

一人ずつ彼に向けて贈る祝いの言葉。

「おめでとう」という言葉に嬉しそうに頷きながら「ありがとう」という彼。

俺も何か言わなきゃ。

人生の門出。
こんなにめでたい事はないのに。

「おめでとう。ニノ」

「ありがと翔さん」

俺は今日、失恋した。