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「Aちゃん、あれは何て書いてあるの?」


隣にいるお母さんがリンゴを綺麗に向きながら棚に飾ってある
紙を見ながら私にそう尋ねた。


『あれ?あれはね、私が死ぬ前までにやりたい10のことだよ』


私はそう言いながら点滴につながれている手をぐーぱーと
まるで存在を確かめるかのように手を握りしめた。

お母さんはリンゴの皮を向いていた手を止め、棚にある
紙を手に取る。


「死ぬまでにやりたい、10のこと」


お母さんは、紙をぎゅっと握りしめた。


「もう、Aちゃん!死ぬまでにやりたいことって!そんなに弱気になっちゃだめだよ!」


お母さんは笑いながら私の背中をバシバシと叩く。


『ちょ、痛いって!私病人なんだからね!』


「ふふ、ごめんね」


お母さんの頬を、水滴が伝う。
もう、お母さんが一番悲しんでんじゃん。


『大丈夫だって!私決めてるもん!』


「何を?」


『親孝行するまでは死なないって!だからまだ死んでやらないんだから!』


と、腕に拳を作りながらお母さんに笑いかける。
すると、お母さんは少し笑いながら指の腹で涙をすくった。


「ふふ…そうね、私が弱気になっちゃいけないね」


『でしょ?』


こんなに単純なことで笑いあう。
それが結局一番幸せなんだよ。
何気ない生活が一番幸せ。

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設定タグ:死ネタ , 悲しい , 歌い手   
作品ジャンル:泣ける話
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作成日時:2019年7月17日 18時

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