陸王 2

7-1 ページ31

ニューイヤー駅伝も終わり、それぞれが次の大会へ向け練習を進めていた


帰ろうと思い玄関へ向かうとちょうど裕人も帰るところだった


｢おう｣


｢お疲れ。インフル流行ってるみたいだから帰ったらちゃんと手洗いうがいしてね｣


｢おー｣


｢絶対しないよね｣


｢ばか、いつもしてるよ｣


｢嘘っぽい｣


そう言って裕人を疑うような目付きで見る


｢そういえばさ、大学の時吉田さんがインフルになったことあったじゃん｣


｢あー。あったな｣


｢その時の部活のスムーズさやばかったよね。吉田さんのいない1週間あっという間だった｣


｢かわいそうだろ｣


そう言いながら笑ってる裕人に向かって｢笑ってんじゃん｣と言って腕を軽く叩く


すると裕人の携帯が鳴る


画面を見て裕人が｢あ｣と声を漏らしたので、｢誰？｣と言うと裕人は画面を私にも見せてくれた


そこには月刊アスリート島さんと出ていて、二人で顔を見合わせる


｢はい｣と言って電話に出た裕人が｢僕なんかじゃまたご期待に添えないんじゃないですか｣と言ってベンチに座ったため、私も隣に座りギリギリまで携帯に顔を近づけるが島さんの言葉はうまく聞き取れなかった


｢わかりました。お受けします｣


そう言って裕人は電話を切り、私の顔を見る


｢いや、近いよ｣


｢全然聞こえなかった！取材受けるの？｣


｢受けることにした｣


｢なんで？｣


｢陸王の宣伝になるかなって｣


｢あー！頭いい裕人！｣


｢だろ｣


そう言って得意そうな顔をする裕人に｢うざ｣と言葉を漏らした


それからしばらく日にちが経ち、裕人の取材の日になった


私は監督と村野さんと一緒に少し離れたところから取材を見ていた


｢まずはニューイヤー駅伝の区間賞おめでとうございます｣


｢ありがとうございます｣


｢レース中毛塚選手の印象はどうでしたか？体調が悪かったこと、なにか気づかれましたか？｣


｢いえ、走っている時は何も｣


｢二人のライバル対決はあなたが怪我をした豊橋国際マラソン以来でしたがそのリベンジを果たしたと思われますか？｣


｢リベンジとは少し違うかな。故障した時はもう2度と走れなくなるかもしれないと思いました。でもいろんな人達に支えられて、故障の原因となるフォームも変えて、シューズも変えて、やっとここまで来ました。だからリベンジと言うよりは、リセットですね｣


｢勇気がいったでしょうね。新しい走法に切り替えるのは｣

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している


←6-12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す