陸王

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｢お疲れさまでした。実は、前にお話した新しい陸王が完成しそうなんです。それで、茂木さんの足型をとらせていただけませんか？｣


監督がだめなら直談判か、と少し感心する


私の頭の中で先程の監督の｢あんたもしつこいな｣という言葉がリピートされた


｢あ、すいません。あの、この間はあぁ言ってしまいましたが、やはり御社の靴を履くことはできないです｣


その言葉に裕人を見上げる


｢1度だけでもだめですか？｣


｢本当に申し訳ありません｣


｢茂木、Aちゃん、どうした？｣


｢あぁ、村野さん。すみません、失礼します｣


そう言ってみんなのところに行こうと歩き出したため、私も歩き出す


｢今の誰だ？｣


｢こはぜ屋の宮沢社長です｣


｢こはぜ屋？｣


｢裕人にランニングシューズ送ってくれた足袋屋さんです｣


私の言葉に村野さんは｢あぁ｣と言って振り返って宮沢さんを見ていた


｢ところでAちゃん、茂木と相合傘とはやるね｣


にやにやしながらそう言う平瀬さんにいつもながら白い目を向ける


｢はい？｣


｢本当は鞄の中に折りたたみ傘あるんじゃないの？｣


｢ほんっとにうざいですよ｣


そう言って私は裕人の傘から内藤さんの傘に移る


｢内藤さん、入れてください｣


｢俺はいいけど｣


すると内藤さんは裕人を見る


｢俺だって全然いいですよ。むしろ内藤さんありがとうございます｣


｢うっざ｣


｢Aちゃん濡れるからもうちょっとこっちおいで｣


と言って内藤さんは私の肩を抱いて近くに寄せる


｢あ、ありがとうございます｣


内藤さんはモテるだろうなぁと心の中で思う


裕人も見習え、ばーかばーか


｢Aちゃん、なんで内藤なの？｣


｢顔も性格もイケメンだからです、平瀬さんと違って｣


｢それちょっと傷つく…｣


平瀬さんがそう言うとみんなに笑いが起こった

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