陸王

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その日の夜、試合後のミーティングを終え家に帰ってきたが、直になんて言えばいいかわからない私はまだ連絡を取っていなかった


おめでとう？でもあんなに悔しがってた直におめでとうって言うのもなんか違う気がするし…


｢お風呂入ったら言う、汗かいたし、先お風呂｣


そう独り言を言ってお風呂に入る


その後お風呂から上がり髪を乾かしながらうなだれ｢なんて言えばいいかわからない…｣とつぶやく


とりあえずと、携帯を手に取ると直からのメッセージを受信していた


直今から家行く。会いたい。


｢え｣


そのメッセージが送られていたのは30分前で、直がそろそろ来てしまうのではないかと慌てて立ち上がる


｢待って、どうしよ｣と言った直後玄関から鍵を開ける音がした


｢来ちゃった…｣


直を出迎えようと玄関に向かうがドアが開いて赤いジャージが見えたと思ったら、次の瞬間私は直の腕の中にいた


｢直…｣


｢会いたかった｣


直の後ろでドアが閉まる音がした


｢ごめん、メッセージ今見て｣


｢うん｣


｢あの、直、｣


｢さっきも目そらされるし、全然連絡来ないし、俺…｣


そう言って直は私を抱きしめる力を強める


｢直、ごめん、なんて言えばいいかわからなくて…｣


言葉につまるが直からの返事はなかった


｢直悔しそうにしてたからおめでとうも違うし、でも次頑張ろうとか無責任なこと言いたくないし…｣


｢俺は、Aからもらう言葉ならなんでも嬉しいよ｣


そう言って直は私の首筋に顔を埋め、私を確認するように大きく息を吸った


｢すごかった。トラック戻ってきた直、どんどんワンジャラ選手と距離つめるから1位になるかと思った｣


｢なれなかった…｣


｢でも、かっこよかった｣


私は直の背中に手を回す


その後私たちはしばらく抱き合っていた


初めて見た直の弱い部分に私は…

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