陸王

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裕人が陸王を履き始めて数日たったある日


練習中に裕人がコースから外れて足首や靴を触っていたため、近づく


｢大丈夫？｣


｢あぁ、うん。なんて言うか…｣


｢痛むのか？｣


同じように心配した平瀬さんが裕人に近づいてきた


｢いや、大丈夫です｣


｢少しでも違和感があるならドクターに見てもらえ。自分で判断して無理すると俺みたいに長引いちまうぞ｣


｢はい。でもなんて言うか、いい違和感というか｣


そう言って裕人はまた走りを再開させた


その後ろ姿を二人で見る


｢平瀬さんもはやく治しましょうね｣


｢はい｣


ふざけてそう言って平瀬さんも走りを再開させた


練習後村野さんが来ていたため、部室で立原さんの調整をしていると平瀬さんと裕人が戻ってきた


｢あぁ、お疲れ様です｣


｢お疲れさん。どうだ？調子は｣


そう言って村野さんは裕人に話かける


｢いいんですか？俺なんかに構ってるとまた色々言われますよ｣


｢言いたいやつには言わせておけ。お前みたいなやつにこそシューフィッターは必要だ｣


｢茂木。お前村野さんにここまで言ってもらえるなんてな、幸せだぞ。羨ましいよ、まったく｣


｢何言ってんだ平瀬。お前が怪我した時もそう言ったろ｣


｢ですよね｣


｢なんだみんなに同じこと言ってんじゃん｣


｢バレたか｣


そう言って笑う村野さんにつられてみんな笑顔になった


この人はすごい人だな、と改めてそう思う


｢いいなー、私も村野さんに靴選んでほしいなー！マネージャーにおすすめの靴とかあります？｣


｢いや、お前のフィッティングが一番必要ない｣


｢はは、Aちゃんはどんな靴でも似合いそうだな｣


｢ほんとですか！？｣


｢村野さん、こいつすぐ調子乗るんで甘やかさないでください｣


｢ちょっと裕人黙ってて！｣


｢あとな、正直言うとちょっと気になってな。どうなんだ、この靴｣


と言いながら村野さんが裕人に近づいていくため私も続く


｢不思議な靴ですね。靴に走らされているような。履き心地は悪くないです。でも、だめですね｣


そう言って裕人は靴を脱ぎ、村野さんに渡す


｢あぁ、ソールか｣


｢全力で走るとなると、このゴムのソールじゃ柔らかすぎて不安定です。レースには使えませんね｣


｢アイディアは面白いんだけどな｣

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