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次の日、練習の準備をしていると続々と部員がトラックに集まってきた
その中にはまだ裕人の姿はなく、思わずため息をもらす
あれから裕人と話す機会は得られず、私達の間になんとなく気まずい雰囲気が流れていた
やっと姿を現した裕人はこはぜ屋のランニングシューズを履いていた
声をかけようと近づくと、裕人は私から離れたところでストレッチを始め、私を避けるように走り出した
走る裕人を眺めていると笑顔で、本当に楽しそうで、気持ちよさそうで
久しぶりに私が見たかった裕人が見れたような気がした
「A」
名前を呼ばれて振り向くと少し気まずそうに裕人が立っていて
「あのさ、」
「その靴どう?」
「え?」
「履き心地はどう?」
「あ、あぁ、すごくいい。なんて言うか、ずっと走っていたくなるっていうか、靴に走らされるっていうか、なんて言えばいいかわかんないけど、走っててすごく楽しい」
「そっか。よかった」
私の思ってた通りだと思い笑みをこぼす
「A」
「なに?」
「この間は…」
「待って!」
きっと「ごめん」と続くであろう裕人の言葉を遮る
「謝らないで」
「でも、」
「本当だから」
「え?」
「マラソンやったことない私が、裕人の気持ちを分かってあげることは出来ないから。…でも、わからないけど、わかりたいとは思ってるよ」
私の言葉にやっと裕人の顔が笑顔になった
「ありがとう」
「うん」
「なぁ、日曜空いてる?」
「日曜?なんで?」
そう訪ねながら直の「次の日曜久しぶりにどこか行こうか」という言葉を思い出す
「いや、この靴で練習しようかなって思って。もし用事あるなら全然いいんだけど、空いてたら練習付き合ってほしい」
「空いてるよ」
「まじ?よかった。じゃあ詳しくは連絡するから」
そう言って走るのを再開した裕人の後ろ姿を見つめる
本当は「予定があるからごめん」って、そう言わなきゃいけなかったのに
なんで空いてるよと言ってしまったのかは自分でもよくわからなかった
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れな(プロフ) - えさん» クールのクの字もない毛塚ですが、今後ともよろしくお願いします!(笑)私も気になります毛塚と付き合うまでの話…(笑)私にかけるか不安ですが考えてみます! (2017年12月11日 18時) (レス) id: 607cd69f3f (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 湖泊さん» 最高の作品とのお言葉、とても嬉しいです(; ;)これからもよろしくお願いします! (2017年12月11日 18時) (レス) id: 607cd69f3f (このIDを非表示/違反報告)
え - れなさん» 思いつきました!回想みたいなかんじで主人公と毛塚が付き合うまでのお話をぜひ読みたいです。ご検討お願いします。 (2017年12月9日 21時) (レス) id: 132dc564f2 (このIDを非表示/違反報告)
え - れなさん» 弱気な毛塚すごいよかったです!原作でも詳しくは描かれてないとのことでしたので難しいかと思いますがぜひまだまだ見たい気持ちでいっぱいです。ありがとうございます!厚かましくリクエストなんてすみません。また思いつきましたら書かせていただきます。 (2017年12月9日 9時) (レス) id: 132dc564f2 (このIDを非表示/違反報告)
湖泊(プロフ) - れなさん» 最高の作品です!いえいえ! (2017年12月9日 1時) (レス) id: 7c2244ffc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2017年11月8日 22時