2-11 ページ28
辛そうに走り続ける裕人をこれ以上見たくなくて視線を逸らす
すると「茂木!」という声が聞こえて視線を上げると監督が裕人を止めていた
「大丈夫ですよ!」
それでもなお走ろうとする裕人を監督は突き飛ばした
「ちょっと来い!」
そう言って監督が室内に入って行くと、裕人は何度も悔しそうにトラックを叩き、立ち上がった
足を抑えながら歩く裕人に続いて、私たちも建物に近づく
ロッカーの方に向かう裕人の背後から監督の声が聞こえた
「こっちだよ」
そう言われて裕人が振り向くと監督が壁に寄りかかって立っていた
「なんだ?その無様な姿は。そんなだからアトランティスから切り捨てられるんだよ」
裕人は監督の言葉に悔しそうに唇を噛んだ
「毛塚に置いていかれるだと?笑わせるな。未だに箱根の5区を毛塚と競い合った自分でいるつもりか?レースにも出られないくせに。お前何様のつもりだ?あ?怪我したの誰かのせいか?Aのせいか?運が悪かったからか?違う!全部自分自身の責任だ。それがマラソン選手だろうが。お前はリタイアした時点でお前を応援してきた家族も友人もチームもサポートしてきたアトランティスもすべて裏切ったんだ」
監督の言葉に私の目から涙がこぼれたのが分かった
「あぁそうさ、半腱様筋の損傷はランナーにとって致命的だ。もう終わりさ」
その言葉に今まで監督から目をそらしていた裕人が監督に目を向ける
「でもな、そこから這い上がる方法が一つある。村野さんが言っているミッドフット着地だ。今までの自分を全部捨てて生まれ変わるしかない。それが出来なければ、お前は本当にここまでだ」
そう言って監督は少し歩き出して、ふと立ち止まった
「這い上がれ、茂木」
監督が再度歩き出すと裕人の目から涙がこぼれた
それを見て私は裕人に声をかけることはせず監督を追いかけた
隣を歩く泣きながら笑う私を見て監督がすごく嫌そうな顔をしていた
「きたねぇな、鼻水出てるぞ」
「鼻水くらいいいじゃないですか」
そう言って涙を拭う
「おいその手でバインダー触るな」
きっと裕人は大丈夫
監督の話を聞く裕人を見て、なんとなくそう思った
104人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れな(プロフ) - えさん» クールのクの字もない毛塚ですが、今後ともよろしくお願いします!(笑)私も気になります毛塚と付き合うまでの話…(笑)私にかけるか不安ですが考えてみます! (2017年12月11日 18時) (レス) id: 607cd69f3f (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 湖泊さん» 最高の作品とのお言葉、とても嬉しいです(; ;)これからもよろしくお願いします! (2017年12月11日 18時) (レス) id: 607cd69f3f (このIDを非表示/違反報告)
え - れなさん» 思いつきました!回想みたいなかんじで主人公と毛塚が付き合うまでのお話をぜひ読みたいです。ご検討お願いします。 (2017年12月9日 21時) (レス) id: 132dc564f2 (このIDを非表示/違反報告)
え - れなさん» 弱気な毛塚すごいよかったです!原作でも詳しくは描かれてないとのことでしたので難しいかと思いますがぜひまだまだ見たい気持ちでいっぱいです。ありがとうございます!厚かましくリクエストなんてすみません。また思いつきましたら書かせていただきます。 (2017年12月9日 9時) (レス) id: 132dc564f2 (このIDを非表示/違反報告)
湖泊(プロフ) - れなさん» 最高の作品です!いえいえ! (2017年12月9日 1時) (レス) id: 7c2244ffc6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひな | 作成日時:2017年11月8日 22時