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入学式1時間前。
真新しいリュックを背負い、着慣れない制服を着て、私を含めた新入生たちは玄関前でガヤガヤとしていた。
それもそのはず。玄関にクラス名簿が貼られているのだ。
私は人混みが得意でないため、少し離れた人の少ないところで場が落ち着くのを待っていた。
でもいくら待っても人が減る気配はない。むしろ増えているのではないだろうか。
少しの苛立ちと人疲れも相まって、そっとため息をついた。
どうすればいいものか、と考えようとしたとき。
「1年生?だよな?」
ふと頭上から聞こえた声に思わず肩を跳ね上げる。
ぎこちなく後ろを振り向けば、上級生らしきオレンジ髪の男子が立っていて。
「まだ入学式すら始まってないのにため息ついちゃって、どうした?」
そう訊いてくる彼はにこやかな顔をしていて、彼の表情を見たら少しだけ気持ちが解れたような気がした。
「クラスもう見た?」
『いえ、あの人混みなのでなかなか見に行けなくて。』
「そうだよなぁあそこ突っ込むのは女の子は勇気いるわ。うん。来年からは掲示場所変えよう。」
うんうん、と先輩は1人で頷いている。
先輩の意見で掲示場所が変えられるものなのか、と疑問に思ったが、彼の腕に巻き付けられている"生徒会"という文字でその疑問はすぐに解決した。
「俺クラス名簿持ってっけど、見る?」
『え、いいんですか?!』
「全然いいぞ!あ、でも勝手に持ち出してきたやつだから誰にも言わないでな?」
口の前に指を当てて眉をひそめる彼が、今はとても頼もしい先輩に見えた。
『ありがとうございます!絶対誰にも言いません!』
「ならよし!んじゃあ君の名前教えて?」
『佐藤Aです』
そう言うと、先輩は手元に抱えていた資料の束と思われるものの中から1枚の紙を取りだし、熱心にそれを見つめ始めた。
「んんん?見つかんねえ……あ、あった!」
先輩が弾んだ声を出したので、私も即座に先輩の手元を覗く。
先輩は「ここ、」と指をさした。
でも文字が小さくて読みにくかったので、私も自身の指で自分の名前を指さしてみた。
『これですよね、?』
「そうなはず!」
どうやら私は1年3組だったようだ。
『本当にありがとうございます!おかげで助かりました』
そう言って頭を下げれば、頭上から聞こえるのは軽快な笑い声で。
「そんな頭下げなくてもw全然いいよ俺も暇してたし!
あ、入学おめでとう佐藤さん!」
先輩は太陽のような笑みを浮かべ、祝福をしてくれた。
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にゃみ - こんなに早く書いて下さりありがとうございます🥺めっちゃくちゃよかったです🥺🥺頑張ります頑張れます!ありがとうございました!これからも見させていただきます♥️ (2月14日 2時) (レス) id: a7e951352a (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - にゃみさん» くすぐり合いっこ、ぜひ次回の更新時に書かせていただきます!素敵なリクエストありがとうございます!!🥹大学勉強など色々大変かと思いますが無理せず頑張ってください…! ❤️🔥 (2月7日 0時) (レス) id: 075899a0c9 (このIDを非表示/違反報告)
にゃみ - めちゃくちゃ大好きです🥺🥺更新いつも楽しみにしています✨️もし宜しければ、くすぐり合いっこ的な感じのシチュエーションのリクエストをお願いしてもいいでしょうか?全然遅くなっても大丈夫です!これを糧に大学頑張ります…! (2月6日 0時) (レス) id: a7e951352a (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - ^ - ^さん» コメントとリクエストありがとうございます!🙇🏻♀️💞隣の席、次の更新で書かせていただきます!これからもどうぞよろしくお願いします🫶🏻 (1月7日 1時) (レス) id: 075899a0c9 (このIDを非表示/違反報告)
^ - ^(プロフ) - めちゃくちゃ刺さりました…😭😭😭大好きです🫶もしよろしければ学パロで隣の席のorsお願いできませんでしょうか…?これからも応援しております…🫶🫶 (1月6日 21時) (レス) id: 217d0834ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪兎 | 作成日時:2024年1月4日 17時