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『セーフ……?』
電車が遅延したことにより、入学式当日に遅刻をした奴という肩書きを背負いそうになった。
スーツに身を包んだ私は、元陸上部の脚力を活かして全速力で走った。
すると思いの外時間がかからず、大学についたとき、時刻は指定の15分前だった。
高校より幾分も立派な門をくぐるのは少し気が引けたが、頬をひと叩きして気合を入れてから足を進めた。
「あっ!!!!!!!」
ふと前方から聞こえてきた焦りの声。
顔を上げると一気に視界が暗くなり、なにかに顔を覆われている感覚がした。
顔にかかるものをひらりと取ってみると、それは誰かのハンカチだったようで。
「すみません!!あの、お怪我とかは…?」
目の前に現れた、ふわふわで少しピンクみのある黒髪の青年はあわあわと忙しなく手を動かしていた。
ハンカチごときで怪我をするわけはないだろう、と思ったがそこには触れないでおいた。彼は最大限の気遣いをしてくれているのだろう。
『大丈夫です!こちらこそすみません』
そう言ってハンカチを手渡せば、彼は安心したように顔を緩ませて「ありがとうございます」と柔らかい声で告げた。
コロコロ表情が変わって面白い人だな、と少し彼に興味が湧いた。
ふと目に入った時計は、もう入学式の10分前の時刻を示していた。
今度は私があわあわする番だった。
『やば、じゃあ私はこれで!』
「え、あっ、あの!入学式です…よね?」
『そうですけど、』
「俺も入学式なんですけど、そのー…どこ行ったらいいかわかんなくて。着いていってもいいですか…?あっ無理にとは言いませんけど!」
彼は心底困っているように眉を下げてお願いしてきた。
私も入学生だからしっかり道知らないんだよなあ…なんて思いながらも、彼を見て見ぬふりできるはずもなくて。
『私もどこ行けばいいのかよく知らないですけど…いいですよ』
そう伝えれば、彼はパァっと効果音がつきそうなほど笑顔になって
「本当ですか!ありがとうございます!!」
とお礼を言ってきた。
彼のその純真そうな笑顔にきゅんとしないわけもなく。不覚にも胸がどきりと高鳴った。
「いや〜優しい人がいてくれて良かった……俺一人だったら絶対入学式遅れてました」
なんてこぼす彼に苦笑を浮かべる。
私が優しいというより、彼の素直さが相手を優しくさせていると言った方が正しい気がする。
「あ、俺佐伯イッテツって言います!」
佐伯くん…覚えておこう。
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にゃみ - こんなに早く書いて下さりありがとうございます🥺めっちゃくちゃよかったです🥺🥺頑張ります頑張れます!ありがとうございました!これからも見させていただきます♥️ (2月14日 2時) (レス) id: a7e951352a (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - にゃみさん» くすぐり合いっこ、ぜひ次回の更新時に書かせていただきます!素敵なリクエストありがとうございます!!🥹大学勉強など色々大変かと思いますが無理せず頑張ってください…! ❤️🔥 (2月7日 0時) (レス) id: 075899a0c9 (このIDを非表示/違反報告)
にゃみ - めちゃくちゃ大好きです🥺🥺更新いつも楽しみにしています✨️もし宜しければ、くすぐり合いっこ的な感じのシチュエーションのリクエストをお願いしてもいいでしょうか?全然遅くなっても大丈夫です!これを糧に大学頑張ります…! (2月6日 0時) (レス) id: a7e951352a (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - ^ - ^さん» コメントとリクエストありがとうございます!🙇🏻♀️💞隣の席、次の更新で書かせていただきます!これからもどうぞよろしくお願いします🫶🏻 (1月7日 1時) (レス) id: 075899a0c9 (このIDを非表示/違反報告)
^ - ^(プロフ) - めちゃくちゃ刺さりました…😭😭😭大好きです🫶もしよろしければ学パロで隣の席のorsお願いできませんでしょうか…?これからも応援しております…🫶🫶 (1月6日 21時) (レス) id: 217d0834ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪兎 | 作成日時:2024年1月4日 17時