3話 ページ4
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「……情けないよね…こんな事で泣くなんて」
Aさんを家に入れ、お茶を入れてくると、そう言われた。
「俺は、兄さんの無責任さの方が情けないです」
慰める言葉が出てこなくて、兄さんの皮肉しか言えない俺は馬鹿だ。
「……ごめんね、真冬君を巻き込んじゃって」
「別に構いませんよ、沖縄旅行、楽しそうじゃないですか」
「…………うん」
俺は、Aさんと旅行に行けることになって嬉しいけど、
Aさんは、兄さんと行きたかった旅行だ。
楽しみな訳ない。
「…兄さんに、どうしても一緒に行きたいって、言えば良かったのに」
小声で、Aさんに聞こえないようにそう言う俺は、確かに最低野郎だ。
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「…どうせなら、楽しい沖縄旅行にしてみせますよ」
不意に自分の口から、そんな言葉が出た。
やけに格好つけたセリフだけど、これしか浮かばなかった。
Aさんは、「ふふっ」と笑って、またありがとうと言った。
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作者名:とある甘いもの | 作成日時:2019年11月14日 18時