１ ページ1
．
金色の長い髪と、白く透き通るような肌。
それは所謂、“美少女”というものだろう。
「お嬢ちゃん可愛いねぇ。一人かい？」
「いいえ、兄と一緒です。」
「兄？」
少女に声をかけた中年の男性は、あたりを見回す。
怪訝そうな顔をして少女に向き直った。
と思えば、はっと思いついたように目を開かせた。
「そうか、お兄さんとはぐれちゃったのか。」
「…？何言ってるのおじさん。ここにいるでしょう？」
ほら、と男の後ろを指さす。
男が振り返る…より早く、後ろにいた人物が男の胸ぐらを掴んだ。
よほど背丈が高いのか、男は胸ぐらを掴まれたまま宙に浮きかけた。
「…兄です。」
「え、あ、お兄さ…」
男が言うのが早いか否か、ぱっと手を離され男が地面に倒れ込む。
ぐえっ、そんな蛙を潰したような声を上げ咳き込んだ。
「妹に手を出さないでください。」
「っ、なんだてめぇ！！」
やられっぱなしは嫌なのか、キレ始めた男は少女の兄を名乗る者に飛びかかる…────
「っと、黙っていればいいものを。」
「がっ、」
男の腕を掴み、そのままぐるりと後ろを向き思い切り引っ張る。
浮いた男の体は、重力に従って地面に叩きつけられた。
「おや、また一件解決かい？」
「いえ、現行犯逮捕ですね。まあもっとも、僕は警察ではないのですが。」
商店街のお爺さんに声をかけられながら、男を拘束するための縄を探す。
一方地面に伏したまま動かない男を、少女は面白そうに木の枝でつついていた。
ちょうどつつかれていた腰の辺りには、紋章が描かれたチャームがついていた。
「ねぇ、お兄ちゃん。これなあに？」
「この紋章……西部の人身取引商会の紋章じゃないか。」
よくやったな。と少女の頭を撫でれば、少女は可愛らしい笑顔を見せた。
「それじゃ、こいつは王宮に連れていこうか。」
こんなところで裁かれるのは、可哀想だからな。
と涼し気な顔で付け足した。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヒナセ | 作成日時：2018年2月18日 21時
