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42話 ページ4

私は今まで、誰かに本当の気持ちを伝えたり、心からの叫びを表に出した事は無かった。



そんな事をする必要は無かったし、私自身も苦手だったのかもしれない。








「A、さん」





それでも目の前に貴方がいるんだから、伝えるしか選択肢はないじゃない。

イソップくんは可哀想な位瞳を揺らしていて、その表情は驚きと困惑に染まっている事は手に取るように分かった。









『…イソップくん。』




先程、叫ぶ様に呼んだその名前を、今度はゆっくり咀嚼するように呟く。





彼は、私が何をしにこの場へ現れたか察しがついたらしく、体を真っ直ぐこちらへ向け頷いた。







『…今まで、イソップくんは私に沢山の気持ちを伝えてくれたよね。ありがとう。…そして、ごめんなさい』





そう言ってから、深く頭を下げた。



腰からしっかりと曲げた礼儀正しいお辞儀、本当に彼に気持ちを伝えるなら、言葉だけでは無くこうして行動で示すべきだと思うから。









『貴方の気持ちに気づいていた。なのに、私はいつも貴方を傷付けて、逃げてばかりで。…だから本当にごめんなさい。』




「Aさん…」





つうっと、涙が一滴頬を伝ってからっきし水分が無い砂浜に落ちる。







その視界の中に突如、黒い靴が映り込む。…あれ、これ前もあったっけ。イソップくんは私より低くなる様にしゃがみ、労わる様な手つきで頬を撫でる。








「どうか自分を責めないで下さい。僕は、今こうして貴女が来てくれた、それだけで…」






優しく柔らかい声が、抵抗なく耳に入ってくる。


私は前に彼がしていた様に、頬に置かれている手をそっと包み込み、立ち上がるように促す。








ゲーム中なのに驚くくらい静まり返っていて、波の音と彼の静かな息遣いだけが響いていた。






ゆっくりと心地よく時間が進んでゆく。その時の流れに私達の関係を乗せて。









『イソップくん。私、私ね…』







嗚呼あのね、ひとつあなたと約束してもいい?









『イソップくんの事が、好き。』




私の事、わすれないでね。

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イヴ(プロフ) - 最近素敵な小説ばっかりみてるから毎回目から汗がでてきます(?) (2020年8月4日 8時) (レス) id: e486ddb9ac (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - おお!御入学おめでとうございます!素敵な作品を完結させてくださりありがとうございました!! (2019年9月14日 1時) (レス) id: cd897ac532 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - 好き……ほんと好き、これ(語彙力) 続き待ってます。頑張ってください! (2019年8月17日 2時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
- うわぁあ…好きです…。イソップ君との約束は、そういうことだったんですね…。。いや、もう本当に好きとしか言葉が出てきません。。これからも応援しています..。頑張ってください! (2019年8月14日 0時) (レス) id: 89b85d5207 (このIDを非表示/違反報告)
るりくん - たまらなく好きです!続き待ってます! (2019年7月28日 23時) (レス) id: b495665938 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梨々華 | 作成日時:2019年4月4日 23時

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