欲張りだから (ページ6)

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F side(3) ページ6

｢おかえり…！｣

ずっと来たかった場所でずっと聞きたかった言葉に出迎えられる。

小動物かのごとく玄関まで走ってきたであろう彼が抱きついてきた。

｢ただいま｣

一緒に住んでいる訳では無いけれどいつの日からか、お互いの家に行き来する時はこのやりとりをするようになっていた。

お互いの見えない高い壁が崩れて笑みがこぼれる。

変装用にマスクをしているからバレないかな、と思ったがすぐにバレてしまった。

｢顔に出てるよ、ユニ曲の時はなかなか目すら合わせてくれないのに〜｣

的確で胸が苦しくなる。

そんなことを言わせてしまうのが自分が原因だということは勿論、何より一瞬だけれども彼がどこか悲しそうな顔をしたのを見てしまった。

冗談だよ、とおちゃらけた様子にすぐ戻ったが苦しくて仕方がない。自分のせいで明るい彼に暗さを持たせてしまっているというのに何故か言葉が出ない。

なにか言おうと思ったが彼が家に上がるよう促したので言うことが出来なかった。

いつかこんな不甲斐ない自分から抜け出さなければ。