生きたい私と逝きたい君。【青】

#002 ページ3

病室に戻る途中、あまり見かけない男の子を見つけた。




もう何年も入院しているから、ここにいる人達とはほとんど顔なじみ、




見たことないけど怪我でもしたのかな？




立ち止まって、しばらくその子を見ていると、相手も視線に気づいたのか、一瞬目が合った。




恥ずかしくて、すぐに逸らしちゃったけど、少し長めの前髪から見えた澄んだ瞳に一瞬心を奪われた









A ｢ねぇ、ゆいなさん、今日ね、新しい男の子見たよ？｣




ゆいな ｢え、ほんと？｣




A ｢同い年ぐらいだった｣




ゆいな ｢あ、もしかして、青凪さんのこと？｣




A ｢あおなぎ？｣




ゆいな ｢うん、青凪 ころんさん、今日怪我で受診してたよ？｣




ゆいなさんが言うには、たまにここの病院に来ているらしい。




すごく礼儀正しい子で、先生が思わず感心するくらい。




ゆいな ｢で、どーして？｣




A ｢え、｣




ゆいな ｢もしかして、一目惚れ？｣




A ｢ちっ違うしっ！｣




ゆいな ｢ふーん、｣




実は図星、




身長が高くて、




目がぱっちりしてて、




イケメンで、




好きになったんだもん....




一目惚れ...なの？




ゆいな ｢頑張ってねぇ？｣




A ｢なっ、違うし！｣




ゆいなさんは、私の言葉を無視するように、小さく手を振って病室を出てってしまった




A ｢もーいいしっ！｣




勢いよく布団をかぶると、私はそのまま目をつぶった。









次の日から、毎日中庭に行って、マリーゴールドに水やりをするようになった。




日に日に成長していく姿を見るのはすごく面白い




そして、あの男の子、ころんさんも、毎日中庭に来るようになった。




ほとんどが、桜の木の下のベンチでゲームをしている。




初めて会った時は私服だったのに、最近は制服を着ている、




それも、苺坂高等学校のもの




苺坂高等学校は、本来なら、私が通う予定だった高校。




一度だけ目が合ったあの日から、




何も話してないし、




ましてや目も合ってないし、




全然ダメダメだけど、




もし私が健康だったら、入院なんてしていなかったら、




ころんさんと同じ高校に通ってたんだ、と思うと、




少し自分の体が嫌になって、




でも少しだけ嬉しかった。

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