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―――――
『あん、あ"ぁぁっ!!!』
腰を うちつけられるたび
ドカドカ と響く にぶい音。
脳ミソまで 揺さぶられるほどの激しさは
セックスではなく もはや暴力で、
『ひゃ、ひゃぁぁぁっ!!』
俺は 何度も何度も 意識を飛ばしかける。
だけど 意識が飛ばないのは、
「まだ。まだまだだ、伊野尾」
『いや、いやぁっ!!』
俺の反応が 薄くなるたび
薮に 叩かれ、つねられ、噛みつかれ、
いつもと違う快感を 与えられるから。
「ほら。俺のこと見ろ」
俺の あごをつかみ
ぐい、と乱暴に 俺の顔を自分へと向けた 薮。
『ひぅ…ひぅ…』
俺を みつめる その瞳は、欲望に満ちあふれている。
と 思っていたのに、
その奥の奥には
かなしみと くるしみが混じっていて、
『あ…』
突きつけられた 現実に
俺は、あきらめることにした。
ふたり用の 大きな部屋に移り住むことも、
薮の 衣食住のために 尽くすことも、
薮と いっしょに歩いていく人生も、
俺の 左手の薬指に マリッジリングを はめることも。
こころの中から ひとつづつ夢を捨てていくたび
ぱりん、と音をたてて 壊れていく 俺のこころ。
あぁ、
笑顔で 生きていくことも あきらめなければいけないのだろうか…
そう思い 俺は瞳を閉じたが、
「おぼえててくれ。今までも、これからも、俺が愛してるのは、伊野尾だけだから」
薮を 愛しつづける ということだけは、
どうしても あきらめることが できなかった。
「だから 伊野尾も、俺のこと、ずっと愛して、ください…」
いや、
あきらめるつもりすら なかった。
fin
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作者名：本田
| 作成日時：2017年10月9日 1時
