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『うわぁぁん…』
「けい、けい…」
ぎゅうぅ、と ありったけの力で 俺を抱きしめる 薮。
俺を 泣きやませたいのだろうが、
何を どうすればいいのか分からず、
俺の名前を呼んだり、頭をなでたり と、おろおろ おろおろ。
なさけない。
帝王様が 聞いてあきれるよ。
「ごめん、ごめんな慧。俺、こんなに 慧のこころを傷つけてたなんて…」
『ふぇっ…ふぇぇん…』
「おねがいだから、慧。泣きやんでよ…」
『っく…や、だ…っ…』
「けい…」
『ゆるさない、ゆるさない、やぶのこと…っ…
だから、ぜんぶ、ちょうだい』
「、」
『その ゆびわも、やぶの未来も、やぶの人生も、帝王みたいな表情も、なっさけない表情も、ぜんぶ、ぜんぶ…っ、ほしい!!』
薮の 身体を引きはがし
左手を差し出すと、
「慧…」
薮は 安心したように ほほえみ、俺の手を取った。
『こう、た…』
その ほほえみに、トン、と 音をたてた 俺の心臓。
…あぁ、まだ いきてる。
しってる?薮。
俺、メンタルは強くなったけど、
こころは 傷だらけで もうボロボロ。
でも いいの。
この傷は、俺が 薮を命がけで愛した証として、残しておくから。
俺の 胃の中にある 薮の 罪の証と一緒に。
それでもいいなら、そんな俺でもいいなら、
俺も、全部 あげるよ。
「伊野尾慧さん。俺と、一生、一緒にいてください」
『…はい』
小さくうなずくと、
そっと 薬指に はめられた ゆびわ。
「ほら」
薮に促され 光にかざせば
キラリと かがやき、
『きれい…』
それは とても、薮の笑顔と似ていた。
.
『ねぇ…ほんとに、ずっと一緒?』
「あぁ」
『俺、もう ガマンしないよ?わがままだよ?』
「知ってる」
『帝王様に、三回も 土下座させた男だよ?』
「帝王様が、土下座してまで 欲しい男なの」
『でも…』
「慧」
薮は 俺の手をつかむと、
ぱちぱち、まばたき。
『、』
俺は、
涙も、感情も、言いたいことも、全部放り投げ、
いとしい旦那様の くちびるに くちつけた。
fin
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作者名:本田 | 作成日時:2017年10月9日 1時