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「い"っ…」






薮の手首を ネクタイで力いっぱい締めると、




その痛さに 顔をゆがめる薮。






しかし、縛りおえた手元を見て、






「懐かしいな。このネクタイ」






うれしそうに、微笑んだ。






『うん。やぶが 就職祝いにプレゼントしてくれたヤツ』






数ある たからもののうちの1つでもある ソレを使って、薮を縛り付けるのも どうかと思うが、







そんなの、もう どうでもいい。







一番のたからものの 薮に比べたら、ネクタイなんて、ただの布だ。








『ふふ。いいながめ…』





薮の胸にまたがり、薮を見下ろせば、





裸で 手首を縛られ、少し期待した表情で 薮は俺を見つめていて、







…あぁ、やっと。







征服感、幸福感、そして 興奮が、俺の身体をつつむ。









『やぶ。手、出して』





俺は薮の手をつかむと、するり、薬指の ゆびわを抜き取り、






『おぼえてて、やぶ』





ゆびわの間から、薮を覗く。






そして、









ごくり








ゆびわを 胃の中に落とした。






『俺、やぶのこと、一生許さないから』






俺の行動に、薮は一瞬 おどろいた表情を見せたが、






「あぁ、許さなくていい」






そうつぶやくと、ぱちぱちと まばたき。






『…ばか』






恋人になったときに決めた、"キスして"の合図。







俺は 前屈みになり、





すこし薄めの くちびるに、くちつけた。






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作者名:本田 | 作成日時:2017年10月9日 1時

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