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「うれしい…いのお…」
『や、ぶ…？』
「うれしい。伊野尾が、俺のこと 助けてくれた。伊野尾が、やっと怒ってくれた。うれしい、うれしい…伊野尾…」
『、なに言っ…』
「伊野尾が、この部屋では 俺が悲しくないように、って ニコニコ笑って。それで、嫌なこと忘れるように、って 俺のこと気持ちよくしてくれてること、分かってた。
でも俺、伊野尾のこと好きだから、怒った顔も 泣いてる顔も、全部見たいんだよ」
『、』
「わがままかもしれないけど…」
ふわり、
大きな手のひらで包みこまれた 俺のほほ。
目の前には薮の顔があって、
あまりにも穏やかな瞳で 俺を見つめるもんだから、
自然と、ほほが熱を帯びる。
…あぁ、俺は薮が好きだ。いまさらだけど。
『ソウルメイト、だから…』
「うん？」
『全部言わなくても、伝わると思ってた』
「うん」
『でもやっぱり、言葉にしないと伝わらないし、言葉にしてほしいな、って…』
「俺も、同じ」
『やぶのこと、ずっとずっと 独り占めしたくて、たまらなかったっ…』
「伊野尾……ごめん」
"ごめん"
その言葉に、薮の瞳にうつる 俺の顔が歪み、
そして ぼやけて、視界から消えた。
『あぁっ…』
「なぁ、伊野尾。ひとつだけ教えて？４ヶ月、思ったより早かった、なんて 嘘だろ？」
『うん…うん、長かった。長かったよぉ…っ』
それはもう、死ぬほど。
ありきたりな表現だけど、死ぬほど長かったよ。
だから やぶ、
『俺のわがまま、聞いてくれる？』
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作者名：本田
| 作成日時：2017年10月9日 1時
