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「おっと、」
よろめきながらも、しっかり 俺を抱きとめてくれた薮。
「今日は ごきげんだな」
はは、と 笑うと、
ぎゅう
俺を 強く抱きしめ
俺の 髪に顔をうずめる。
「…ただいま」
『おかえりなさい』
最近、こうやって 抱きあうことが多くなった。
抱きあいながら
お互いの ぬくもりに安心し、
自分の居場所を 確認し、
過去の あやまちを反省し、
もう二度と、同じことを繰り返さないよう 誓い、
そして、
今 自分はしあわせなんだ、という現実で フタをし、前へ進む。
『お仕事、おつかれさま』
「家事をがんばってくれてる、かわいい恋人の為だから」
『ふふ、かっこいい』
「なんたって 帝王ですから」
『もう』
パシ
薮の胸に ネコパンチ。
俺が、『やぶが、帝王だから』と言って以来、
薮は ことあるごとに
「俺は 帝王だから」と 茶化してくるようになった。
最初は、帝王=悪の大王 と勘違いしていたようだが、
本当の意味を知り、その意味に とても満足したらしい。
『はいはい。帝王様は すばらしゅうございます。帝王様の右に出るものは、誰もおりません』
俺は 薮の腕からすり抜けると コンロへと戻り
『帝王ごっこは もう終わりね!』
帝王ごっこの終わりを告げ、料理を再開するが、
「慧」
俺を呼ぶ、少し 威圧感のある 低い声。
『もう、帝王ごっこは いいってばぁ!』
しつこい薮に 呆れつつ
持っていた おたまを置いて 振り返ると、
『っ、』
薮が 床の上に ひざまずいていた。
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作者名:本田 | 作成日時:2017年10月9日 1時