心理学的雨の日の考察 ページ8
「雨の日は他人との境界線が曖昧になる気がする」
だから嫌いなんだと窓辺に腰かけたお前が言った。
落ちてくる水滴を目で追いかけるのをもう小一時間は続けているという後やめる気配はない。この時ばかりは彼の気を引く方法は存在せず、用がある時は待たなければいけない軽い地獄が待っている。
「でも……だから人は雨になるとしきりに嬉しくなるのかもしれない。傘は顔を隠すから何時もより本音が言える? 」
独り言を繰り返せば自分で否定して、また考え出して。つくづく思うのだ。こいつは哲学者なのかと。しかし今回は心理学的なのが謎だ。
「そんな事よりチェスでもしようぜ。なんでそんな事に時間を使えるのかわかんねえよ」
人の部屋に上がり込んでさらにはベッドを占領する俺はガキ大将かもしれない。
口下手がいると会話が続かずに一言一言の間に無音空間が生まれる。
お世辞にも居心地がいいとは言えないけれどこいつといると不思議に飽きない。
「人間は矛盾する生き物なんだと思う。不変なものを好むくせに常に進化を求める。何かを保護しても別の何かを傷つけるんだよ。不老を求めて他者を殺す」
俺には理解できない話だ。でも不思議と否定する気も起きない。
生憎考えるのは苦手だ。いつも頭で考えるより先に口が皮肉を言っているから、だから俺の周りには敵が多いのだと思う。
「ん……お前がそう言うならそうなんだろ」
あと数年で俺らはここを出る。ロイは才人になるかもしれないが俺は才能なんてないからあって昇華隊程度。
それ迄は一方的で良いからお前の友達でいたいんだ。唯一の理解者だから。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ