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重い扉を軋ませて開く。今日の仕事は終わったしこっそり抜け出してカジノでもと思ったのだがそうはさせてくれない人物が壁に寄りかかっていた。
「ああ、いたんだ? 態々その足でご苦労なこった」
その名も我らが上官のヴァイス・スフォルツ。それはそれは人柄が大層いいことで有名な総括様である。
「お前またやったんだろ。あれ程」
「わーってるよ。精神を追い詰めるなだろ。今回は上からの許可は得てるんだぜ? 」
上官の言葉を遮るなんて俺ぐらいだ。互いに思想の違いは壁となり大きく反りあがっている。霧が二人を隠している気がしてならない。
「あいつはもっと刑を軽く出来たはずだ。それを何故誘導した」
なんだそういう事か。所詮は偽善なんだ。人間はそんなもんだ。
しかしこの隊の奴らは自己犠牲が強い。欲は押さえつけて周りを助ける。正直言って虫唾が走るばかり。
「勝手に相手が死んだだけだ。あーそうそう、家族呼んどいてくれよ」
サトリ野郎は無視。「どうしてだ」と目線で訴えかけるがそれ程嫌いという事で宜しいのか、聞くのもめんどくさいのか。
いや、両方か。
「説明だ。殺しましたなんて言ってもいいけど昇華隊の面目丸潰れだろ? だから上手くやってやろうってんの」
性格柄相手を話に飲み込むのは得意中の得意。丸め込んだ瞬間は特に幸せだ。
宜しくなと一言残してその場を去る。
サトリ野郎を横切る時、とても興味深い表情をしていた。呆れ? 悲しみ? 違う、静かな怒りだ。
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