Twilight 《Ren.N》

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少しだけいつもよりゆっくり朝食を取ると

彼は仕事に行きました







『おはよう』

『行ってらっしゃい』






その2言を言える幸せを

しっかりと噛み締めました





1人になると

ひしひしと感じる虚無感に

心が奪われてゆきそうになりました









『…さ、用意しよ』









洗面台に向かうと

ひとつのコップに並んだふたつの歯ブラシが


彼とすごした時間は幻ではなかったのだと


そう、信じさせてくれます









だけれど、もう1つ









忘れていった彼の上着から



微かに香る香水の香りと




ポッケに入っていたパールのピアスも




もうひとつの残酷な事実を忘れるなと





わたしの心にそう語りかけました









私はいつだって1人じゃ無力で


事実を突きつけられる度傷つくはずなのに


自分で拒むことはできなくて








私を慕ってくれる人に頼ってしまおうだなんて


耳を塞ごうとしている自分が



好きにはなれない









だけれど、きっと私は今日もまた



彼の優しさに甘えてしまうんだろうなあ






彼が選んでくれた白いブラウスに身を包んで


お気に入りの赤いリップを塗って


家を出ました

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