浮気症

第五話 ページ6

無一郎side









知ってた









二年前のAが現場を目撃するよりも前から









時折不死川さんからしのぶさんの匂いしたり









しのぶさんが不死川さんを見る目が、そういう目だったり









柱の何人かも、勘のいい人は気づいてた









でも。




誰も何も言わなかった









いや






言えなかった









知ってて、薄々気付いてても尚、

一生懸命に笑うAを見てたら









部外者の僕達が、言える事なんてある訳ない









Aにその事を聞いても、

『なんの事ですか？』って、乾いた笑顔をするだけで









誰よりも苦しい筈なのに









……あの日、ついに見ちゃったんだ









Aが見た現場を、僕は目撃したんだ









走ってどっか行くもんだから
雨の中必死で探し回って









見つけた時には顔も、手もボロボロで









何て言葉をかけていいのか分からなくて









僕はただ、抱き締めたんだ









どうしていいのか分からなくて

次の日からその話題に触れられなくて









心の中ではそんな男やめて僕にしてって叫んでても









伝えたら、Aが困る事くらいわかってるから









2年経った今も、僕は、何も出来てない









何もしてやれてない









その３人の関係も、何一つ変わってない









僕は









無力だ

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