【オリジナル】ホワイトハッカーⅡ (ページ6)

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メンタルヘルスページ6

1ヶ月程前、あたしの父……宇野は、ある大企業の小社に派遣され、その企業の会議に出席したのだという。

だが、それがいけなかった。

その企業のトップに立っていた社長こそが、この家の当主だったのだ。

ということは当然、当主もこの会議に出席し、嫌でも顔を合わせることになる。

そして当主から、文字通りの『実は不倫してました～てことで女房寄越せ～寄越さないとお前を潰すぞ』的なシチュエーションになったのだと。

ふざけた話だが、宇野はショックのあまり、帰りに駅の線路内に飛び込んだ…と。

で、もちろん母もそれを知るわけだ。

叫び泣いたあと、家をフラリと出ていった。あたしはすぐに母を追いかけたが、途中で「ごめんね…愛羅。もう苦しい思いはさせたくないけど……でも、これしかないの……。」と悲しそうな顔で告げられ、あたしは足を止めてしまった。

そして母は、多分だと思うが、自分の職場があるビルに入っていった。

母が何をしようとしているか、何となく分かっていても。それを止めることなどは出来なくて。

まだ肌寒い3月の夜に吹かれ帰路を歩き、独りきり、家で一晩を過ごした。

翌朝、何気なくテレビをつけてニュースを見ていると、アナウンサーの淡々とした口調でこう流れた。

『では次のニュースです。今日午前4時半頃、東京都○○区の○○ビルの一室で、女性が首を吊っているのが発見されました。このビルの従業員によると、発見された女性は、このビルで働く宇野鴇子さんだということです。警察は、昨日の夜に首を吊った自殺とみて、捜査を進めています。』

……あぁ。

分かってた。分かってたよ。

分かってたけど、でも、涙が止まらない。なんでここまで不幸にならなきゃいけないの。

憎んだ。この手で殺してやりたいとも思った。当主の妻子に至るまで全て、憎んでやろうとも。

全て奪ってやりたかった。

それからは、本当に何も覚えていない。

ただ、そのニュースの少しあとに家のドアが開いて、二人の若い男があたしを連れていったくらい。

で、気付いたらこの屋敷にいて、身寄りがないから引き取られたんだなーと思った。

同時に、ここが憎い当主の家と知った。