捌 ページ9
轟焦凍 側
Aはよく笑うようになった。
最初の頃は俺を怖がって近づく度に肩を揺らし、表情を強ばらせていた。それも今ではあまりなく、俺を見つけると寄ってきては何かを話してくる。
それが今では楽しい。
｢･･･｣
ある宿の、ある一室の前に来ると姿を戻して襖を開ける。
大きな体に5つもの角を持ち、火玉を部屋中に漂わせるそいつの前に座る。
｢焦凍、随分と遅かったな。｣
いけ好かない笑みを浮かべるこいつは、俺の父親で鬼の中でもある鬼の次に強いと恐れられている。
俺はこいつを好かなければ、普段から関わる気もない。そんな奴が俺をわざわざ呼び出した。
｢最近女と、それも人間の女と暮らしていると聞いたぞ。｣
｢･･･あんたには関係のないことだ。｣
｢ふんっ、どれほど力の持った者を勧めても反抗ばかり･･･一言言ってやる、人間はやめろ。進む時間も、寿命もーー｣
ダンっ！
大きく足を踏み鳴らして立ち上がる。
｢お前見たいにはならねぇよ｣
強く、睨みつけるとその場から立ち去った。
人は百年も満たずに亡くなる。それに対して俺達鬼は何千年と生きる奴もいれば、数百年というのが普通だ。
俺は126年生きている。俺達にとっては若いという見方で、時間で言えば大して経っていない。
それなのに人間だけは変わっていく。時も、物も、全て。人間は変化を残して亡くなっていく。
｢･･･｣
ふと、目に留まった物。
それ手に取った。
『･･･ーー！』
柳から、俺を見つけて手を振るA。
俺が短いと思う時間、Aにとってはとても長く感じている。あいつに突かれてしまった、突かせてしまった。
Aは不思議そうに首を傾げてこちらに寄ってくる。
『どうしたんですか？』
丸い目大きな瞳に俺が写る。癖のある髪に触れると柔らかく、頬に触れると壊れそうなほど小さい。
俺の手に触れる手も小さい。
『なにかありました？』
｢･･･いや･･･A後ろを向いてくれ。｣
『？、後ろ？』
背を向けさせ、髪を手ですくうと｢擽ったい｣と肩を窄める。
晒された項にそっと指を添える。
｢帰るか、｣
『？、はい。』
首を摩るA。
そんなAを横目に俺は悪い鬼だと思う。
自分の印を入れたのだ。
俺のだと、俺から離れないようにと、他の者が触れないようにほんの少しの時間でも俺はこの人の子と
『夕ご飯は何にしますか？』
共にいよう。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
