陸 ページ7
『お、おはようございます。』
｢ん、｣
あの撫でた日以来、朝起きると頭を出される。
撫でることが日課の様になってしまい、今日もまた撫でる。
(髪の毛柔らかい、さらさらとしている。)
はい、終わりと手を離すと悲しそうな目をされる。まるで犬の様で、愛らしいと思った。
『ふふ、旦那様は甘えん坊なのですね。』
｢･･･笑った、｣
『ん？』
｢いや、何でもない･･･｣
鬼のことは最近、旦那様と呼ぶようにした。
最初は嫌そうな顔ばかりをされたが、毎日何十回と呼ぶことで慣れくれた様だった。
もう1月、思えばこの旦那様は悪い鬼じゃない。
｢A、都に行かないか？｣
『それは、こちらの？』
｢いや、人間の町だ。｣
人間の！
それを聞いて乗らない私ではない。
すぐにでも準備を済ませ、旦那様に着いた。
｢ここから出るまではこれを着けること･･･｣
渡されたのは白い布地に目のようなものが書かれたもので、目の所に着けるようにと言われた。
『あの、旦那様これは前が見えません。』
｢大丈夫だ、俺が抱えて行く。｣
『！、せめてお腕をお借りしてもいいですか！？』
｢･･･分かった。｣
腕に捕まり、家を出る。
思えば家から出るのは初めてで、少しばかり高鳴る胸を抑えつつ布越しに見える微かな黒い影を目で追った。
一山越え、川辺に来ると石の上に座らされる。
｢もう外しても大丈夫だ｣
『･･･都までは随分とかかりますね。』
｢？、すぐに着くぞ。｣
｢すぐ？｣首を傾げる私に旦那様は水をくれる。
どういうことだろうか？水を飲み、行きましょうか。そう言おうとした時だった。
急に抱えられてしまい、固まる。
『あの、』
｢行くぞ。｣
『！、いやああああ！！』
有り得ないほどの速さ、有り得ないほど空を跳ぶ。叫ばないはずがない。
木の上、岩の上を踏み台にして軽快に跳ぶ。
旦那様にしがみつき、心の中でお経を読み上げる。
｢･･･A、目を開けてみろ。｣
『む、無理です！』
カサッと何かの上に止まる。
恐怖で震えていると旦那様は｢悪かった｣と、肩を叩いてくれる。
｢一言言えばよかったな･･･悪い癖だ･･･泣いてるか？｣
『泣いてません、』
｢なら、良かった。｣
しばらく私が落ち着くのを待ってくれる。変わった鬼、人間なんかに優しくしてくれるなんて。
旦那様から香るはお線香の匂い。それが落ち着くということは黙っておこうと思う。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
