参拾玖 ページ41
轟焦凍 側
ほんの10分前のことだった。
初めて携帯の画面に表示された名前に不信感を抱きつつも電話に出た。
｢はい。｣
俺だ。と言った声とは別にピッ、ピッと機械音が聞こえてくる。
｢おい、今からいう場所に来い。｣
｢爆ごーー｣
｢黙って来い｣
言われたのはここからは少しばかり距離のある病院の名前。その間も機械音が病むことなく一定の感覚で鳴り続ける。
｢爆豪、その、｣
｢黙って来いって言ってんだろ。｣
一方的に切られた電話。
その意味を考えることはせずに黙って向かう。仕事の途中だったが爆豪の様子から最優先にすべきだと考えた。
あれから3日。俺は以前、Aを見てからというものの夢を見る頻度も増えた。その夢で明らかにされた過去。
緑谷に半分問い質す様に聞くとぽつぽつと呟かれた言葉は俺の不鮮明な部分にパズルの様に埋められた。一つ一つ、重なって、1枚の絵になった。
｢爆豪･･･｣
｢おせーんだよ、テメェは｣
｢悪ぃ｣
いつもの尖った口調では無い。どこか覇気のない、爆豪らしくもない言葉が地面に一つ一つ落ちている。
｢あいつ、今、死にそうなんだよ｣
｢･･･は？｣
｢過度なストレス、疲労、睡眠不足、個性との関係が悪いから悪化する一方･･･たかが熱でだ｣
今にも壊れそうなほど揺れる赤い瞳が俺を見る。
｢てめぇなら治せんだよ、」
爆豪はどんな思いで俺に頼んでいるのだろうか。
俺は医者じゃない。治せない。
けど、才能マンの爆豪が言うのなら確かなんだろうな･･･
爆豪の肩が掠めていく。
｢あいつ、頼むわ｣
小さな声、消えそうな声で確かにそれ言った。
俺も不器用だが爆豪も、そうだ。俺たちはどこか似ていると俺は思っている。だから同じ人を思って、手を伸ばして、愛した。
｢ありがとう｣
聞こえない背にそれを言い残し、歩を進めた。
看護師に案内された病室は個性対策のもの、分厚い壁と扉を目の前に母と会う時と同様の震えがきた。
トン、トン･･･
静かにノックをし、開けると目の前のベットに横たわる女性。無駄に暑い部屋はクーラーが着いているだけで意味をなしていない。
ゆっくりと椅子を引く。
｢A、｣
黒い角、尖った爪、俺のせいでそうなってしまった。俺のせいで今、苦しんでいる。
その手を握ると俺の手に簡単に収まる。
静かに息を吸い込むとまた、名前を呼んだ。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
