参拾漆 ページ39
ブー、ブー、ブーッ
『はい、』
｢今どこにいんだ。｣
『駅、前、』
待ってろ。その声と同時に切れた電話。
あの後、私はその場から中々動けず最終の電車に乗って帰った。顔も酷ければ精神も馬鹿みたいに弱くなっている。
爆豪さんの待ってろ、の為にホームからふらふらの足で動く。前もろくに見てない私は階段とは真逆に歩いてたみたいで何かに当たる。
『すみ、ません、』
｢いえ、こちらこそすみませ･･･ん、｣
相手の言葉がよくは聞き取れなかったが詰まったのが分かった。それが不思議で顔を上げた。
『っ！あ、』
素っ頓狂な声が出てしまう。
目の前の人物に、さっきまで馬鹿みたいに泣き崩れていた原因の人物が目の前にいるのだ。紅白の頭と見慣れた火傷の跡。好きな人だ。
焦凍さんの驚いた目はそのまま私の紙の持つ手に移動する。咄嗟に紙を隠すとごめんなさい、と震える声、震える足で逃げる。
｢なんでっ！逃げる！｣
掴まれた腕が熱を持つ。
プロヒーローと運動不足の一般人では追いつかれるのは分かっていた。分かっていたけど足が動いた。
｢A、俺はーー｣
『しょ、対面、ですよね、私達、』
｢･･･初対面にそんな顔すんのか？俺には違ぇって言ってるように見える。｣
違う、そう言いたいのに出てこない言葉がそうだと固定する。
掴まれる腕は痛くない、相変わらず優しいこの人が懐かしくて、これを望んでいたのだと心が弾む。好きという感情が諦めていたはずなのに零れる。
『っ、なん、で、』
訳の分からない感情が渦巻き、崩れそうになる体を支えたのは焦凍さんではなく、
｢離せ、半分野郎｣
爆豪さんだった。
掴まれた腕が離れ、その後を掴んだのは爆豪さんの手。知らないうちに涙が出ていたのか爆豪さんの上着が被せられる。
｢帰んぞ｣
頷くことも出来ず、引かれるままに歩く。
｢A！｣
好きな声が私を呼ぶ。
思わず振り返ると焦凍さんの目とかち合う。
｢俺はっ、もう｣
必死なその目が、声が訴える。
｢どこにも行かねぇからっ！｣
待ってる。その先を聞かなくても分かった。途端、今まで以上の大粒の涙がホームを、階段を濡らす。
人生最大の喜びは、この腕を引いてくれる爆豪さんが私を見つけてくれた時だった。
それを上回る程の喜びを今、感じたのだ。
『しょ、っぅとぉ、』
もう声も出ない。
その中で掠れる声は爆豪さんでも、誰でもない彼を呼んだ。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
