参拾 ページ31
少しばかり上ずった爆豪さんの声と、気のせいだろうか焦凍さんの声も聞こえた気がした。
飲み会の席なら居て当然、偶然にも聞こえただけ･･･それなのに私の心の中はもやもやと気持ち悪く、鉛のように重たく感じた。
(覚えてないんだよね、)
明かりのついていない玄関に倒れ込むと熱の集まる目に手を当てる。
テレビのインタビュー、雑誌の記事や表紙。
録画して、買って･･･ただのヒーロー｢ショート｣の一ファンで、ただの一般人
時々思う。
私は妄想が行き過ぎた痛い奴で、本当は前世なんかなくて好きすぎて現実と妄想が混濁してるんじゃないかって。
(爆豪勝己は、私に合わせてくれる紳士)
納得しそうになる。
それほど私は、弱っている。それを自覚するのが怖くて目を瞑っている。それでも瞑りきれない時に爆豪さんがいて、隣にいることに現実だと思うのに今は、いない。
それが致命的だった。
『･･･焦凍っ、』
暗い部屋、冷たいフローリング、冷たい空気が私を蝕む。
どうして、私を忘れたの？
私はどうすればいい？
忘れられたら楽なのに、それを許さない神様がいる。それが腹立たしい。幸せそうな焦凍を見て心に嘘をついて、何も無い。
虚しいばかりの嫉妬
寂しいと嘆く心
涙が止まらない。
玄関に倒れ込んだまま、爆豪さんに怒られる。なんて分かっていながらも眠ってしまう。
ぼんやりと、この時は心地よかった。
私の好きな匂い、好きな体温
『･･･しょ、と』
好きな人によく似た何かに胸が締め付けられた気がした。薄らと目を開けるも黒い影と早い心臓の音が聞こえただけ。
それだけで安心した。
きっと、爆豪さんだ。
朝になったら怒られるかな、とまた眠りに落ちた。
｢A｣
もう名前を呼んでくれる人も、腕を伸ばして抱き締めてくれる人も、優しく口付けて微笑んでくれる人もいない。
女々しく追うのは諦めよう。そしたら、次は何も覚えていないかもしれない。
夢の中なのか、心の中なのかハッキリとは分からなかった、
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
